2025年8月19日付フォーリン・ポリシー 誌は、トランプ大統領のプーチン大統領との米露首脳会談やゼレンスキー大統領らとの首脳会談を踏まえて、トランプ外交を批判するハーバード大学のスティーブン・ウォルト教授の論説を掲載している。
トランプ大統領がアラスカで行ったプーチン大統領との米露首脳会談、ワシトンDC で行った北大西洋条約機構(NATO)首脳らとの会合は、トランプ大統領が交渉者として最低であり、譲歩技術の名人であることを示した。トランプは、準備を行わず、何を実現したいかも何を避けたいかも分からずに会談に臨んでいる。戦略はなく、行き当たりばったりである。
トランプが渇望しているのは、注目を浴びることであり、劇的な画像である。取引の中身は二義的なものでしかない。トランプ、ルビオ国務長官、にわか外交官ウィトコフといった軽量級がロシアのプーチンやラブロフ外相と相対すれば、出し抜かれる。
容易ならざる相手との間で交渉を成功させるためには、双方の利害、力、決意についての無慈悲なまでに現実的な評価が必要である。プーチンをレッド・カーペットでもてなしたからといって、プーチンのような指導者から譲歩を引き出すことはできない。希望的観測からも、誰も真剣に受け取らない威嚇や約束からも、得られるものはない。
問題の根幹は、脅威と死活的利益についてのロシアと西側との理解の不均衡にある。プーチンは、ウクライナをNATOに加入させることがロシアにとって生存に関わる脅威であると考える。
西側エリートは認めたがらないが、 NATOの拡大、特に2008年にウクライナとジョージアに加入申請の準備を認めたことが戦略的な大失敗であった。それは、プーチンの不法な戦争を正当化するものではないが、「根本原因」であり、和平合意で勘案すべき点である。
ウクライナにとって受け入れ可能な結末は、クリミアを含めた失った領土の回復、NATOとEUへの加盟であると主張する論者は、どうやってそれを実現するかについて、一貫性を持ち、説得力のある戦略を示すべきである。
では、トランプがアラスカでの米露首脳会談で、ロシアに味方したのは正しかったかといえば、そうではない。プーチンの要求のうち、NATOが加盟国の一部から部隊を撤退させるべき、ウクライナが武装を放棄すべきとかの要求は拒絶すべきである。ウクライナは今後のロシアの攻撃から守られるべきで、自らを守る手段を持つべきである。
