第三に、医療機関との交渉方法がわからない。企業側は「診断書の根拠を知りたい」と思う。しかし、人事総務担当者が尋ねても、主治医は守秘義務を理由に情報提供を断る。
「医師同士なら話が通じるであろう」「本人の同意があれば話が通じるであろう」と考えて、会社の産業医が本人の同意の下、会社に情報提供を求めても、メンタルクリニックは情報を出さない。そもそも、産業医が非・精神科医であれば、どこが問題なのか、専門的な判断ができないので、どの情報を出させて、どのように交渉を運べばいいか、わかりようもない。
会うたびに変わっていく社員
筆者は、これまでにもこの問題に直面した企業担当者の生の声を数多く聞いてきた。多くの担当者は、会うたびに変わり果てていく社員を見ている。
その中には、「『3ヵ月要休職』の診断書をもらったことは何度もあるが、その3ヵ月後によくなって戻ってきた人は少ない。ほとんどの場合、会うたびに具合が悪くなっていって、その悪い状態のまま、『復職可能』の診断書を出してくる。メンタルクリニックは、社員を本当に治しているのか。薬漬けにして、悪化させているだけなのではないか」とまで言う人もいた。
メンタルクリニックが働く人のメンタル不調を治せない理由
メンタルクリニックが働く人のうつ状態を適切に治せないことについては、多くの原因がある。
まず、仕事に関連したメンタル不調は、薬物療法だけでは治らない。むしろ、不適切な薬剤選択、必要を超えた薬剤量によって、悪化させる場合も少なくない。
医師の中には、自宅療養に伴う睡眠リズムの不整、通勤という運動機会の喪失、対人交流機会の喪失など、休職長期化の弊害を知らない人もいる。療養指導の方法も、介入ポイントも知らないので、断酒指導すらしないまま漫然と抗うつ薬を処方していることもある。療養先の環境を把握していないので、休職期間中、患者が独居の自宅にて、長期間、誰とも口をきかない状態に置かれていることに気づいていないことすらある。
