2025年12月6日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2025年9月6日

 なお、この新組織の兵士たちによる行軍も行われた。といっても、サイバー空間部隊も情報支援部隊も銃を持っての行進なので、解説抜きでは他の軍種と見分けがつかなかったが。新組織の部隊旗もはじめてお披露目されたことが中国のネットでは話題となっていた。

10年前との大きな違い

 10年前の閲兵式でも多くの新兵器が登場している。当時の報道を引用しよう。

今回、中国軍の中でも最もベールに包まれている「第2砲兵」(戦略ミサイル部隊)の主力兵器が続々と登場した。射程1万2000キロを超え、米本土への攻撃が可能な大陸間弾道ミサイル「DF(東風)5B」が初めて披露された。
他国軍を中国周辺に接近させない「アクセス拒否、領域拒否」能力を支えるミサイルも登場した。尖閣諸島をはじめ、沖縄から台湾、フィリピンに至る第1列島線内にある米軍基地などが攻撃可能な「DF16」(射程1000キロ)や、「DF26」(同4000キロ)などだ。
「中国、米にらむ最新兵器 本土攻撃可能なミサイル」『朝日新聞』2015年9月4日
2015年の閲兵式で披露されたのは、ミサイルだった( ロイター/アフロ )

 10年前の“目玉”はミサイルだった。その意義は「アクセス拒否、領域拒否」(A2/AD:Anti-Access/Area Denial)にあった。米軍の接近を抑止する能力が誇示されたのだ。A2/ADの継続的な向上が進められている一方で、より能動的な智能化戦争のための兵器が数多く作られている点が大きな違いだ。

 米軍に近寄らせないが主眼の15年から10年で、アクティブな軍隊へと生まれ変わりつつある。

国際協調から共産党の正統性の誇示へ

 10年前と比較すると、中国の“姿勢”にも大きな変化が見られる。閲兵式前に行われた習近平総書記の重要講話から分析する。

 15年の講話では、中国が「世界反ファシズム戦争の東方主戦場」であったことが強調されている。日本人の視点から見ると、どうしても「抗日戦争」の式典としてとらえてしまいがちだが、中国が打ち出したかったメッセージは、日本やドイツ、イタリアのファシズム陣営と米国、欧州、ソ連、中国などの反ファシズム陣営という世界大戦の一環が日中戦争であり、米中は肩を並べて戦った戦友であるというものであった。

 オバマ元大統領は11年以後、リバランス政策を打ち出し、軍事外交の焦点をアジア太平洋地域とする方針を打ち出した。14年には南シナ海において中国が人工島を造成していることが国際問題化し、米中関係は一気に悪化へと向かっていた。この背景下において、米中の結束を呼びかける狙いがあったわけだ。


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