2025年12月5日(金)

21世紀の安全保障論

2025年8月29日

 日本初の国産長射程ミサイルである「12式地対艦誘導弾能力向上型」の最初の配備先に関し、防衛省が陸上自衛隊健軍駐屯地(熊本市)とする方針であると一部で報道されると、多くのメディアでは、同ミサイルは相手国の攻撃目標となるため、駐屯地周辺住民が攻撃の巻き添えになる不安を感じていると報道された。この報道に対して防衛省は、配備先については検討中であり決まっていないと述べているが、熊本県知事や熊本市長は住民の不安を踏まえ、配備についての国からの説明を求めている。

熊本への配備が報道されている12式地対艦誘導弾能力向上型(防衛省・自衛隊Xより)

 しかし、このミサイルの配備に伴う住民の不安を減らす方法とは「説明」なのであろうか。ここでは、違う視点から考えてみたい。

なぜ、攻撃目標になるのか

 12式地対艦誘導弾能力向上型は、日本の本土および島嶼への着上陸侵攻に際して、遠方から火力を発揮して洋上の敵艦船等を撃破することを主たる目的とするミサイルであり、射程は1000キロメートル以上と言われている。この距離は、九州から発射すれば南西諸島全域のみならず中国本土沿岸や台湾北部海域など東シナ海のほぼ全域が射程に入り、沖縄本島から発射すれば、フィリピン北部海域までが射程に入ることを意味する。

12式地対艦誘導弾能力向上型の射程距離は広く、他国からの攻撃の抑止力となる(防衛省・自衛隊ホームページより)

 現有の12式地対艦誘導弾は射程が約200キロメートルと言われているが、この射程では、敵艦船はミサイルの射程外から航空機、ヘリコプター、ミサイルなどを用いて日本を攻撃することが可能となる。しかし、12式地対艦誘導弾能力向上型が登場すると状況は一変する。

 敵艦船は日本に接近する遥か以前から攻撃を受けるため、侵攻は極めて困難になる。したがって日本を侵略しようとする国は、12式地対艦誘導弾能力向上型を攻撃して無力化する必要に迫られるのだ。


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