2025年12月5日(金)

21世紀の安全保障論

2025年8月29日

 また、現在の12式地対艦誘導弾能力向上型の発射機は、一目で自衛隊のミサイル発射機と分かってしまう特徴的なものだが、ミサイルの発射機能を商用の40フィートコンテナに格納し、それを商用のコンテナトレーラーに積載すれば、一見して自衛隊の装備品と判定することは難しくなる。こうすれば、陸上や海上を移動する際にも秘匿が容易となる。

 「守る」とは、敵が12式地対艦誘導弾能力向上型を「攻撃しても効果を少なくする」ことである。

 そのためにはまず、12式地対艦誘導弾能力向上型の部隊を分散して配置し、攻撃を受けた場合の被害を最小化することが重要になる。また、誘導弾発射機などの装備品を地下に収容するなど、攻撃に耐えられる措置を講じることも必要だ。

抑止力としての効果と住民不安の解消に

 防衛省では、12 式地対艦誘導弾能力向上型に加えて、離島などに侵攻する敵部隊や艦船を長射程で狙う島嶼防衛用高速滑空弾および極超音速誘導弾の開発を進めている。また、各種誘導弾の長射程化についても検討されており、将来的には射程が1500~3000キロメートル以上になるとも言われている。さらに、射程1600キロメートルとされる米国製のトマホーク・ミサイルを海上自衛隊の護衛艦に搭載する準備も進められている。

 このように、今後自衛隊は多くの長射程ミサイルを装備することになるが、これらについても攻撃目標にならないための「隠す」、「騙す」、「守る」という三つの方策が求められる。その三つの方策を確実に実施することで、長射程ミサイルは抑止力・対処力として機能することとなり、同時に長射程ミサイルが攻撃目標とならなければ、攻撃の巻き添えになるという住民の不安を減らす効果も得られる。

 住民の不安を減らす方法は、「説明」ではなく「攻撃目標にならないようにすること」との発想の転換が必要だ。

Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る