2025年12月5日(金)

21世紀の安全保障論

2025年8月29日

攻撃目標となることを防ぎたい陸上自衛隊

 12式地対艦誘導弾能力向上型が攻撃目標となることに対する住民の不安がメディアで取り上げられているが、実は、同ミサイルが攻撃目標となることを最も防ぎたいのは、陸上自衛隊だ。12式地対艦誘導弾能力向上型が敵の攻撃目標にならない(攻撃されない、または攻撃できない)ことで、同ミサイルの機能発揮が可能となり、日本への侵攻を抑止・阻止することが可能となる。

 同時に、12式地対艦誘導弾能力向上型が攻撃目標にならない状態になれば、攻撃の巻き添えになるという住民の不安は減ることになる。これは陸上自衛隊にとっても住民にとっても望ましいことだ。

攻撃目標にならないための方策

 12式地対艦誘導弾能力向上型が攻撃目標とならないためには、基本的に三つの方策が考えられる。それは、「隠す」、「騙す」、「守る」である。

 「隠す」とは、敵が12式地対艦誘導弾能力向上型を「捜しても発見されない」ようにすることである。

 そのためにはまず、誘導弾発射機などの装備品を、上空や周囲から見えないように建造物の中に入れることが重要となる。自衛隊では、重要な装備品が露天に晒されている場合も多いが、それでは「どうぞ攻撃してください」と言っているのと同じだ。また、12式地対艦誘導弾能力向上型の部隊が用いる通信手段を秘匿度の高いものにして、所在地を特定されないようにする必要がある。

 そして、配備先、編成、行動などに関する情報を非公表とし、自衛隊内でも開示を制限することも必要になる。こうした情報が敵に伝われば、攻撃が可能になるからだ。

 今回のように、配備先が報道されるようなことは、あってはならない。当然ながら、配備先について地元への説明は行ってはならない。12式地対艦誘導弾能力向上型が日本中のどこにあるか分からないようにすれば、攻撃目標になることはなく、住民の不安も減ることになる。

 また、頻繁に移動させることも必要だ。既に述べた方策を講じても、特定の配備先にずっと留まっていれば、情報が洩れる可能性が高まる。したがって、多数の配備先を事前に準備しておき、不定期に移動させることで現在の配備先の特定を避けることが可能になる。

 「騙す」とは、敵が12式地対艦誘導弾能力向上型の「真偽を特定できない」ようにすることである。

 そのためにはまず、誘導弾発射機などの装備品のデコイ(偽物)を多数作成し、本物と同様に配備先に留まったり、配備先を移動したりすることが効果的となる。


新着記事

»もっと見る