2025年12月5日(金)

World Energy Watch

2025年9月10日

 原発への課題が残る中、フランスでは重要産業と位置づけるAI(人工知能)産業の発展やデータセンターの拡大に伴い、電力需要の増加が予測されている。仏エコロジー移行省によれば、フランスの発電電力量は35年までに24年比で約20%増の668テラワット時(TWh)に達する見込みである。

 一方、フランスは国際的な温暖化対策枠組み「パリ協定」を推進する立場にあり、温室効果ガス排出削減を目的とする脱炭素政策を率先して行う責任がある。このため、原子力と並んで、温室効果ガスの主要因である二酸化炭素(CO₂)を排出しない再生可能エネルギーの導入を重視している。

風力発電への期待

 フランスが導入を進める再生可能エネルギーのうち、太陽光発電よりも風力発電の方が拡大傾向にある。24年末時点、発電電力量に占める風力の比率は、原子力(全体の61.1%)と水力(13.9%)に次ぐ、8.7%に達した。風力発電量は46.6TWhを記録し、太陽光発電量(全体の4.6%、24.8TWh)を上回った(出所:フランスRTE)。

 フランスにおける風力発電の導入は96年の「エオル(Eole) 2005」プログラムに始まり、01年には陸上風力発電からの電力に対する買取価格制度が導入された。これを機に、陸上風力発電所の設置が加速し、フランス本土の風力発電設備容量は01年の66メガワット(MW)から10年後の11年に6.7GW、25年6月時点では23.5GWまで拡大した。

 陸上風力の設置地点はフランス全土に広がっており(図1)、特にフランス北部では、太陽光発電よりも風力発電が電力供給において重要な役割を果たすと期待されている。

 その背景には、太陽光発電が日照時間や天候に左右されやすいという特性がある。南部と比較して、北部や大西洋沿岸部では日照時間が短く、とりわけ電力需要が増加する冬季には日照が少ないため、太陽光発電では需要ピークへの対応が難しいとされる。

 ただ、設置が拡大する陸上風力には、土地利用や環境面での課題が伴っている。例えば、フランス国内に設置されている風力発電機の多くは、ブレード先端を含めた全高が約150メートルに達するが、軍事レーダーや航空交通の安全確保のため、高さ制限が設けられている区域が多数存在し、風車の大型化を阻む要因となっている。

 また、自然保護区や観光地においては、景観保全や騒音の抑制を求める住民の声が根強い。さらに、農業大国であるフランスでは、農地の転用に対して慎重な姿勢が求められ、開発可能な用地の確保に制約がある。


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