2025年12月5日(金)

World Energy Watch

2025年9月10日

 三菱商事は2025年8月27日、洋上風力事業の第一次入札で落札していた秋田県沖および千葉県銚子市沖の3海域での事業から撤退すると発表した。この発表を受け、日本の洋上風力の行方に対する不安が一層高まっている(次を参考。山本隆三「三菱商事は悪者なのか?洋上風力撤退の決断を数字で検証してみた、ガラガラポンの発想転換が必要な理由」)。

 政府および経済産業省は20年12月に「洋上風力産業ビジョン」を策定し、30年までに10ギガワット(GW)、40年には最大45GWの導入を目指すという野心的な目標を掲げてきた。この目標の達成が厳しい状況となっていると言える。ただ、その原因は三菱商事という民間企業にしてはならず、国のエネルギー政策への考え方を改める必要性も出てきている。

フランスの洋上風力事業は日本と何が違うのか(Sophie BENARD/gettyimages)

 現在、洋上風力事業に対する逆風は日本だけでなく、世界的に広がっている。こうした中、洋上風力をエネルギー安全保障の重要な柱と位置づけているフランスの取り組みが注目される。

フランスが直面するエネルギー課題

 フランスは戦後一貫して、原子力発電を中核とするエネルギー政策を推進してきた。発電電力量に占める原子力の比率は、1970年時点の3%から80年代半ばには70%にまで拡大した。以後、原子力発電はフランスでコストが安く、昼夜を問わず安定的に発電できる電力源(ベースロード電源)としての役割を担ってきた。

 しかし近年、原子力発電を取り巻く課題が鮮明となっている、まず、22年に熱波による河川の水温上昇で冷却水を十分に確保できず、定期点検や腐敗による運転停止も重なり、原発を全面的に稼働できなくなった。原発不調を受け、フランスは周辺諸国からの電力輸入の拡大に踏み切り、80年以降初めて電力の純輸入国に転落した。

 また、原発の老朽化により、原子力発電を長期的に維持することはますます困難になりつつある。現在稼働中の57基のうち46基は70~80年代に建設されたものであり、多くが運転開始から約40年を経過している。 

 フランスのマクロン政権は22年2月、6~14基の新たな原子炉を建設するとともに、既存炉の運転期間を50年以上に延長する方針を発表した。同政権は安全性の確保を前提に長期運用を検討している一方、廃炉問題を先送りしたに過ぎず、いずれかの段階で運転の停止を決断せざるを得ないだろう。

 さらに、新設計画への障壁も大きい。24年12月に稼働したフラマンビル原発3号機は、07年の着工から完成までに約14年を要し、当初12年を予定していた運転開始は大幅に遅れた。建設費も計画の約4倍に膨らんだ。


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