2025年12月6日(土)

勝負の分かれ目

2025年9月10日

今季のパ・リーグも議論の余地

 レギュラーシーズンでのゲーム差によるアドバンテージ(勝利数)の追加や、大差が付いた場合にはCSを実施しないという発想は、理にかなっている面がある。

 今季の阪神のように1球団が独走した場合、他球団は「CS進出」を念頭に置いた戦いにシフトせざるを得ない。エース級の起用なども“首位たたき”ではなく、2位以下のチームとの戦いを優先してもおかしくない。つまり、首位を追いかけるのが難しくなった時点で、完全にCS進出へ目標が切り替わるチームが出てくるのだ。

 首位チームは、他球団のマークが甘くなれば、さらなる独走状態となって、結果的にファンもしらけてしまう。今季の阪神の貯金は8月以降、一気に積み上がった。

 一方、首位とのゲーム差によってアドバンテージが変動したり、CSそのものがなくなってしまったりするとなれば、2位以下の球団は首位チームも意識して、エースをぶつけるなどしてゲーム差を意識した戦いを強いられる。2位以下のチームのファンも、CS争いだけでなく、首位チームとのゲーム差も念頭に応援に力が入るだろう。ゲーム差を意識して、簡単に優勝を許さないことでレギュラーシーズンが盛り上がるという好循環を生む可能性もある。

 今季のパのようなケースでは、3位チームのCS進出にも議論の余地を残す。ソフトバンクと日本ハムが熾烈な優勝争いを繰り広げているが、9月8日時点で首位に12差を付けられている3位のオリックスもCSに進出できる。

 日本シリーズは、セを独走した阪神と、熾烈なパの優勝争いを制したソフトバンクか日本ハムの対決になってこそ、盛り上がるだろう。首位チームがシーズンの強さを発揮して順当に勝ち上がれば問題はないが、CSは下剋上の可能性があることが醍醐味でもある。もしも、セの2位以下のチームと、パの3位チームによる日本シリーズとなれば、球界全体として盛り上がりを欠くことにならないか。

改革なしではまたもメジャーに奪われる

 昨季の日本シリーズは、大谷翔平選手らが所属するメジャーのワールドシリーズと日程が重なり、すっかり話題をさらわれた。メジャーに対抗する意味でも、日本シリーズの価値は問われている。

 ゲーム差によってCSの試合数が減ったり、開催がなったりすれば、短期的には興行収入を失うことになるが、長期的な視点で、日本シリーズの価値を維持できるシステムを模索する必要がある。

 「日本一」を決めるにふさわしいシリーズの在り方と、ビジネスの視点から魅力的なCSをどう天秤にかけるか。また一つ、日本のプロ野球が大きな課題に直面した。

Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る