2025年12月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年9月22日

 ウクライナに安全の保証が提供されねばならないと論ずる向きがある。この可能性の検討は慎重であるべきである。ウクライナは1994年に得た保証にもかかわらず既に2度侵攻を受けた。

 欧州と米国は、ウクライナへの航空機と地上部隊の派遣の検討においては慎重であるべきだ。「安全の支援」の方が「安全の保証」よりも魅力的に見える。

 停戦の推進は簡単ではないし、仮に停戦が実現することになっても、長続きせず、平和への一歩ではなく単に一休止に過ぎないこととなる危険がある。戦闘の再開を未然に防ぐ方法は、抑止力を強化することによって戦闘の再開を魅力のないものとし、停戦違反を犯す側に課せられるコストを具体的に示すことだろう。

 停戦が長続きし、暫定的な停戦ラインが永続的に近いものとなる危険もある。これが朝鮮半島とキプロスの経験である。それでも、戦争の継続より遥かに好ましい。

 そして、いつの日か、新たな指導者が登場する暁には、平和協定を交渉する機会は恐らくあるであろう。それまでは、長続きする停戦が誰にとっても最良のオプションのように見える。

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停戦の追求が現実的なオプション

 トランプは停戦を実現することを当面の目標としていたはずであるが、8月15日のプーチンとの会談後、「持続しないことの多い停戦合意ではなく、戦争を終結させる和平合意を直接目指すべきだ」との立場に転換したことがあった。プーチンに誘導され胡麻化されたのかも知れない。

 上記の論説で、ハースは危険を察知し、「機が熟していない」状況での和平を追求することの危険性を指摘している。トランプは和平のための「領土交換」に言及したらしいが、まさしく、ウクライナが不当な領土割譲を強いられることになりかねない。

 戦争を終わらせるためには「根本原因」の除去が必要とするプーチンにとって、問題は領土にとどまらない。ウクライナの存在自体の否定がその目標であるが、この立場を譲る様子は見えない。

 もろもろの状況を勘案すれば、停戦の追求が現実的なオプションである。もっとも、ハースは停戦が近いうちに実現するとは思っていないようだ。

 現状は、ウクライナの観点に立てば、ロシアに占領地を大きく拡大されたのが実態である。停戦はその実態を反映したものとならざるを得ない。


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