入場券販売は開幕まで低調で、前売り目標の1400万枚に対し、開幕前日の4月12日までに売れたのは7割の969万枚にとどまった。協会の計画では、人件費や広報宣伝費など総額1160億円の運営費のうち8割超を入場券収入で賄うことになっている。
前売りが売れなかったことから予想されたように、開幕しても来場者数が伸びない状況が続いた。万博は1日最大22.7万人の来場を想定しているが、開幕の4月13日は人気歌手・Adoのライブなどがあったにも関わらず12万4339人と物足りず、開幕2日目は半減よりも低い5万3660人だった。
結局、4月の来場者は1日平均8万人台となり、春の大型連休(4月26日~5月6日)が始まっても増えずに関係者の不安は高まった。来場者数が開幕日を上回ることはなく、特に5月6日は雨が降ったとはいえ、会期終盤の現在の水準との比較では、3分の1程度の5万9582人という閑散ぶりだった。閑古鳥の鳴くパビリオンも目立ち、スタッフが「今なら予約なしで入場できます」と、懸命に呼びかけていた。
SNSの力で盛り返す
ところが、連休が明けると状況は一変する。連休後、最初の週末となった土曜日の5月10日からにぎわいが一段階上がり、この日以降、来場者は10万人以上で推移するようになったのだ。
来場者が急に増加した理由について、関係者は当時、「万博がどんなものか様子見していた人が多かったのかもしれない」と語っていた。協会もテコ入れを講じていて、「夜間券」について1時間早い午後4時から入場できるよう変更などしていた。
来場者数を押し上げた最大の要因は、実際に来訪した人の口コミだったとみられる。迫力ある大屋根リングや各パビリオンの趣向を凝らした展示に、SNSを中心に「意外と悪くない」といった声が駆け巡った。
民間シンクタンクのアジア太平洋研究所(大阪市)によると、インスタグラムの万博関連のハッシュタグ(検索目印)投稿数に関し、「#大阪万博」は昨年11月末時点で7.6万件だったが、今年6月末時点で21.2万件まで増加していた。
三菱総合研究所が開幕後の5月に全国3000人を対象に実施した調査では、万博に「行きたい・すでに行った」とした人は33.7%で、前回の昨年10月調査の24.0%から伸びた。地域別は京阪神圏が51.7%で、前回調査の36.3%から大幅に増加。今回調査でも首都圏の数値は京阪神圏よりも低かったように、「大阪のイベント」の色合いは濃いものの、来場意向は高まっている。
