さらに翌20年、トランプ大統領がインドを答礼訪問。モディ首相の故郷でインド独立の父ガンジーの生誕地でもあるグジャラード州アーメダバードにまで足を延ばし、世界最大規模のクリケット・スタジアムで行われた10万人超の集会で熱狂的歓迎を受けるなど、両国間、両国首脳の親密ぶりは頂点に達したかに見えた。
この時点で米国メディアの間では、二人の接近ぶりについて、「brother」(兄弟)と「romance」(ロマンス)を組み合わせた造語で特別親密な男性同士の関係を指す「bromance」(ブロマンス)との表現でもてはやされたりもした。
2人の主張の食い違い
ところが、トランプ再選後の今年2月、モディ首相がホワイトハウス再訪以来、両国関係にすきま風が入り始めた。
きっかけは同首相訪米直前に、トランプ氏がインドを含む世界各国相手に一方的に打ち出し始めた関税措置だった。モディ首相は、これまでの「ブロマンス」関係を頼りにトランプ氏との直談判で関税軽減を当て込んでのホワイトハウス再訪だったが、期待外れに終わった。
それどころか、会談後の共同記者会見では予想に反し、トランプ大統領がモディ首相の目の前で以下のような厳しい発言に終始した:
「そもそもインドは、以前からわが国の製品に高関税を課し、米国からの輸出がひどく阻害されている」
「モディ首相も最近、不公平で途方もない関税障壁の削減措置に言及しているが、実際、これは深刻な問題だ」
「インドが米国からの輸入品にどれだけ関税をかけようと、わが方もそれに応じて課税するので、実際は問題にならない」
その後、去る5月には、インド―パキスタン間の国境紛争が勃発、両国軍は10日後に停戦合意したが、その際、トランプ大統領が停戦に向けて果たした役割評価をめぐり、大統領とモディ首相の主張が食い違い、二人の個人的関係にも冷水を浴びせる結果となった。
この点について、大統領は停戦直後に「自分がインド、パキスタン両国首脳に直接働きかけて停戦に至った」と自画自賛して見せた。直後には、パキスタン側の戦闘を指揮したアシム・ムニール陸軍参謀総長も声明でトランプ氏の功績に触れ、「印パ両国による核戦争の回避に努力してもらった」として、トランプ大統領を2026年ノーベル平和賞受賞候補に推薦する意向まで表明した。
これに対し、モディ首相はじめインド政府は一貫して、トランプ氏の停戦合意に至る役割には公式論評せず、同首相自身も現地メディアに対し、「停戦合意数日前に、パキスタン軍最高幹部からインド側に、停戦の打診があった」ことも明らかにした。
