2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年6月3日

 アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)日本研究部長のオースリンが、4月21日付ウォールストリート・ジャーナル紙掲載の論説で、習近平が中国空軍の航空能力と宇宙能力の統合を推奨したことに対し、米国は衛星や通信システムに対する壊滅的な攻撃に今から備えるべきである、と述べています。

 すなわち、中国では軍事活動とNASAが別個である米国と異なり、宇宙計画は軍部が管理している。中国は何年も前から、宇宙空間の軍事化に努めてきており、外国の衛星を破壊する技術を着実に向上させている。

 中国は2007年に、自国の古い気象観測衛星を破壊し、対衛星能力で世界に衝撃を与えた。中国はまた昨年5月新しい移動式発射機からの発射とみられる対衛星ミサイルの実験を行った。

 他方米国防省は、対衛星システムの開発は行っていない。米国の月探査計画が終わる一方で、中国は昨年12月探査機の月面着陸に成功し、いずれ月面に人間を送る計画であり、月面に基地を設置するかもしれない。

 以上を背景に、習近平は、宇宙空間を新しい戦場にするべく、中国の技術を指導すると宣言した。米国の国土安全保障と軍の立案者は、中国がいかに、そして何のために航空と宇宙の能力を統合しようとするのか、真剣に検討する必要がある。

 今米国が運用しているGPS衛星は30個にすぎない。中国がこれらの衛星を標的にすれば、気象観測、民間航空、スマートフォンなどを支えているGPSの運営が、麻痺しないまでも妨害されることになるだろう。そうなれば米国経済に大きな負担になり、産業全体が閉鎖に追い込まれることもありうる。それは市民を標的にし、抵抗する意思をそごうとする絨毯爆撃の21世紀版である。

 同様に習近平は、ネットワーク化された戦闘システムという米国の絶対的優位を奪う方向に動いている。米空軍は、20個の先端衛星通信システムを運用している。これらのGPS衛星を標的にすると、米国の軍事作戦の遂行を、不可能ではないにせよ困難にし得る。米国議会はこのような弱みを憂慮し、国防省に通信不能の状態での米軍の行動能力を調査するよう要請した。


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