「メンタル不調→休職→退職」をパッケージにするクリニックも
クリニックの中には、休職とともに職場復帰支援を積極的に行っている良心的なところもある。
しかし、「休職診断書」をうたい上げるクリニックのすべてが、復職、ないし、再就職を積極的に支援しているわけではない。妨害しているわけではないが、休職を支援するのと同じだけの熱心さで、復職を支援しているとはかぎらない。
退職代行会社と組んで退職を支援するところもある。「メンタル不調→休職→退職」という一連の流れをひとつの“商品サービス”としてパッケージ化して、休職へ、退職へと、導くクリニック・チェーンが存在する。
休職ビジネスにせよ、退職代行会社にせよ、功罪あいなかばである。もし、その社員が未払い残業、ハラスメントが横行する、いわゆるブラック企業ならば、休職ビジネスは「功」となる。退職代行会社がブラック企業から社員を解放するという社会的意義を要するように、「休職 診断書 即日発行 オンライン」を謳うクリニックも、同様の社会的意義があろう。
その一方で、「罪」もありえる。そもそも、そういうメンタルクリニックは、正しく診断しているのか、自宅療養を要する状態か否かを判別できているのかという、疑問も生じる。
心身の不調で真に休職を要する社員は確かにいる。しかし、「休みたいだけ休み、戻りたくなったら戻ればいい」という程度に休職を軽く考えている社員もいる。この両者を、「休職ビジネス」クリニックは、識別できているのであろうか。
長期的な休職はメンタルを悪化させる
休職は、短期的には過酷な状況から個人を解放するが、その効果は早晩頭打ちとなる。休職を続けた結果の損失が休職によって得られる利益を上回る時は、思いのほか早く訪れる。弊害が利益を上回るや否や、日に日にメンタルは悪化する。悪化の原因は、職場ストレスにではなく、休職長期化そのものにある。
自宅療養に伴う睡眠リズムの不整、通勤という運動機会の喪失、対人交流機会の欠如など、休職長期化はメンタルヘルスにとって極めて有害である。加えて、職務遂行力が低下し、顧客・同僚との関係は希薄化し、会社はその社員をあてにしなくなる。社員としての自信は失われ、日を追うごとに復職への意欲は低下する。
休職ビジネスを展開するメンタルクリニックは、復職を促すとはかぎらない。復職のために何が必要かを説明しない。
毎回の外来では、症状について尋ね、薬剤を増やす、ないし、変更する。そして、次の予約を入れる。その繰り返しである。
