2024年4月18日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年6月9日

 第四に、任務支援能力を向上させることである。太平洋における陸軍は、戦闘訓練、民事部隊、技術者、兵站、軍事諜報、特殊部隊、海外地域担当士官、といった、多様な任務支援グループを持っている。これらは、米太平洋軍とそのパートナーの能力を支援し、強化している。陸軍のこうした活動は、他に比べて、あまり注意を引かないかもしれないが、これらは、地域における米国の統合および合同展開あるいは訓練を下支えしている。米軍の軍種間、また、アジア太平洋のパートナー国との間での兵站のインターオペラビリティを高めることは、平時、戦時双方における危機対処能力を高めることになろう。

 中国の接近阻止ネットワークの台頭は、米国にとり、国策と軍事戦略概念をシフトさせることを強いる形で、主要な脅威となりつつある。私は、陸域の広範囲を保持する陸軍の能力は、将来の政策立案者に選択肢として残しておくべき、基本的能力であると信じる。しかし、陸軍は、伝統的な任務に加えて、アジア太平洋のような重要地域における平和と安定の維持に貢献する、概念や能力についてよく考えなければならない、と論じています。

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 アジア・リバランスと予算の制約とにより、既に2015会計年度の予算要求とQDR2014では陸軍予算の大幅削減が予想されていますが、その中でも更なる予算削減で、軍種間の予算獲得争いが激しく、陸軍にしわ寄せが来そうな状況の中で、米下院シーパワー及び投射戦力小委員会のフォーブス委員長が、陸軍の重要性を強調している論説です。

 まずは、地上発射ミサイル部隊の重要性であり、おそらくこの点は誰も異存はないところでしょう。そして、従来、合同作戦や、訓練、兵站、諜報、技術面などで陸が果たしてきた役割の強調です。戦車、火砲、装甲車などの伝統的な陸軍の装備、役割には全く言及していません。フォーブスは、政治家ではありますが、軍事には詳しく、バランスの取れた考え方をする人物なのでしょう。陸軍を庇いながら、論旨には違和感を感じさせていません。

 米陸軍は、アイゼンハワー、マッカーサーなどの俊秀を生み出した伝統ある組織です。また、どの国でも、陸軍は、もともと人員が多く、海・空と異なり技術習得の負担が少ないために、優れた行政官、戦略家を生み出す余地があり、伝統的には軍の中枢的地位を占めて来ました。それが主たる削減の対象となるのですから、当然、抵抗はあるでしょうが、この論説は、大局は見失わないで、かつ、良く陸軍の立場を弁護しています。

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