第四のパターンは、低資源・低需要型の再生型観光地である。人口減少が著しい農山漁村やかつての産業都市がこれに該当し、観光資源が限られ、需要も低い。
課題は経済基盤の脆弱さと雇用機会不足である。戦略としては、観光と農林水産業や再生エネルギーなど他産業を組み合わせた複合型地域振興、アートプロジェクトやワーケーションによる外部資本・人材の呼び込み、小規模ながら高関与型の旅行者(教育旅行やボランティアツーリズム)の誘致、そして高失業地域における観光雇用創出による総雇用増への寄与が重要である。
観光人材の転換
観光は従来、非正規・季節雇用の比率が高い産業であった。しかし、地域経済の基幹として位置づけるためには、雇用の「通年化」「専門職化」「高付加価値化」を進めなければならない。
第一に、観光を軸とした地域内複業モデルの普及である。繁閑差を吸収し、農業やイベント業務、オンライン接客などを組み合わせることで、通年所得を安定化させる。
第二に、観光とDX・データ産業の融合により、新たな職種――観光データ分析、ブランドマネジメント、地域体験設計など――を生ませる。これらは地方における知的雇用を拡大させ、若年層の定着を促す。
第三に、女性・高齢者・外国人の就労参加を促進し、多文化共生型の観光社会を形成することが重要である。
さらに、人材育成の面では観光職のキャリアパスを制度化し、技能や知識に応じた賃金制度を確立すべきである。これにより、観光従事者が「地域価値の創造者」として誇りを持てる環境をつくることができる。
産業構造と雇用のグランドデザイン
中長期的に日本の産業構造を再設計するには、①エッセンシャル産業の効率化と人員確保、②地域別の産業再配置、③観光・コンテンツ・ウェルネスを軸とした成長雇用の創出という三本柱が必要である。
まず介護・医療・物流・農業などのエッセンシャル分野は、AI・ロボット技術やスマート農業によって省力化を進めつつ、外国人材の受け入れや中高年のリスキリングにより人材を確保する。そのうえで、賃金補助や職能認証制度を導入し、社会的地位を引き上げるべきである。

