2025年12月6日(土)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2025年7月13日

(drante/gettyimages)

 私は京都で生まれ育ち、18歳で東京に出て、65歳で再び故郷に戻ってきた。長い年月を経て戻ってきたこの街は、私の記憶にある雅やかで風格ある古都の面影をほとんど残していなかった。代わりに目の前にあったのは、キャパシティー以上の観光客に溢れ、文化の香りを薄められた「変わり果てた京都」の姿だった。

 京都市の人口は2023年は144万人(京都市の公式サイト)その一方で、 京都市の公式発表である「京都観光総合調査」によると、2024年の京都市における観光客動向調査結果は以下である。

 それによると、

  • 外国人観光客数:1088万人 (前年比53.5%増、過去最高)
  • 宿泊客数(実人数):1630万人 (前年比10.5%増、過去最高)
  • うち 外国人宿泊客数:821万人 (前年比53.2%増、過去最高)

 となっている。観光客総数は以下である。

  • 2024年:5606万人 (過去最高)
  • 2023年:5028万人
  • 2019年(コロナ禍前):5352万人

 特に「5606万人」という2024年の数字は、京都観光総合調査の最新のデータであり、過去最高を記録しており総観光客比率は約39倍(5606÷144=39倍)。

 つまり人口の約39倍もの観光客がこの狭い盆地に押し寄せていることになる。これは世界の他の観光都市と比較しても異常な規模である。

 例えば世界の観光都市と比較すると、

  • ロンドン(人口:約900万人)→  総観光客:約3000万人(比率:約3.3倍)
  • パリ →  約8.6~9.5倍
  • ニューヨーク →  約1.8〜2.1倍
  • 東京 →  約1.2〜1.4倍

 京都の「39倍」という数値がいかに突出しているか、改めて浮き彫りになる。

観光による生活インフラの圧迫

 新幹線や地下鉄、バスといった交通インフラは観光客には便利だが、39倍の観光客が押し寄せることで、地元住民にとっては深刻な負担となっている。これはコロナ禍前にも見られたことだが、特に市バスは混雑が激しく、地元の高齢者や通学する学生たちがバスに乗れない事態が日常化している。

 地下鉄は烏丸線(からすません)と東西線しかなく、比較的空いているが運賃が高く(東京メトロの初乗り運賃の23%高い)使い勝手が悪く市民にとっては経済的負担も大きい。私の地元の知り合いからは、「自分の街に住んでいるのに、移動すら自由にできない」――昔のチンチン電車が懐かしいと、そんな声をよく耳にするようになった。

 街中はゴミが目立ち、清掃も追いつかず、美しかった街並みは風情を失っていくばかりだ。


新着記事

»もっと見る