もう一つは、お寺の広い畳の部屋に母と2歳上の姉と私の3人だけがいる情景です。
「ママ、これからどうするの?」と姉が母に問いかけました。
「どうしようねぇ」と、母は2人の幼子の手を握りながら気弱に言った情景です。
私は子どもなりに「大変なことが起きたんだ」と感じた記憶があります。
その後は母子家庭として母が働きながら2人を育ててくれました。
母は、よく親父の話をしました。
「パパはね、早くに死んで、悔しかったと思うよ」
「パパはね、頭が良くて、政治家を目指していたの」
「政治家にはお金がかかるから、若くして貿易会社を興したの」
ときには、家計の苦しさからか、親父をなじるようにこんなことも言いました。
「けいちゃん(親父の名)は、なんで早く死んじゃったんだろうね……」と。
でも、母の口ぶりは、いつも親父を愛していたことが感じられました。
だから、私にとっての親父は、いつでも「いる」感覚で育ったように思います。
その点は、母にとても感謝しています。
そんな母は、22年前に家族に見守られながら他界しました。
他界の直前に母は夢を見ました。
「けいちゃん、なんでそんなに若いの? 私はこんなに歳をとったのに……」と、夢から覚めて話しました。
「ああ、親父を愛してんだなぁ」とあらためて感じ、母に「ぼくを産んでくれてありがとう」と感謝の気持ちを伝えました。
父の日に贈る花は?
ところで「父の日」って、「母の日」ほどに祝ってもらえませんよね。少なくとも私はそうでした。ていうか、あんまり普及していないんじゃないかなぁ。
毎年6月の第3日曜日が「父の日」なので、今年は6月15日。
父の日が始まったのは、100年も前のアメリカでのこと。