2025年12月6日(土)

古希バックパッカー海外放浪記

2025年10月19日

(2025.7.2~9.24 85日間 総費用34万2000円〈航空券含む〉)

なぜトルコを自転車&キャンプ旅で周遊するのか

イスタンブールのガラタ橋で釣りをする人々。ガラタ橋の近くには名物 のサバ・サンドイッチの売店が並んでいる

 筆者はトルコには35年くらい前に仕事の関係でイスタンブールに2回滞在したことがあった。その時にイスタンブールの主な名所旧跡を訪ねている。さらに20年ほど前に12日間のグループツアーに参加してイスタンブール、トロイ、エフェソス、パムッカレ、カッパドキア、アンカラとトルコ定番の観光名所を巡った。 当然のことながらトルコの大都会と観光地をサラッと“表面”を見ただけである。

 今回のトルコ旅では是非とも現代の“トルコの人々”(grass roots)の生活や社会に直に触れてみたいと考えていた。さらに時間を気にせずに自由に行動するためには、自転車にテントや寝袋を積んでキャンプすることにした。自由に行動して夕方になれば適当なキャンプサイトを見つけてテントを設営すればよい。

 逆に毎日ホテルなどに泊まると、自転車旅では宿から宿への移動自体が旅の目的になってしまう。また田舎や人家の少ない場所では宿がなく宿がある町まで1日100キロも走らなくてはならない。それでは本末転倒である。それゆえ自転車&キャンプ旅という旅行スタイルにした次第である。

『毎日絶景の海を眺めるトルコ周遊』のルートはどのようにして決めたか

 筆者は旅行プランを検討する時にその国や地域を漠然とイメージして3カ月以内の旅行期間で往復のフライトを予約するだけである。具体的なルートは現地入りしてから考える。トルコ向け格安航空券は東京~イスタンブール往復しかない。従い日本出発前に決めたのはイスタンブールを起点に反時計回りで周遊するということだけだった。

 折り畳み自転車(folding push bike)の自重14キロと荷物の15キロと食糧・水1キロで合計30キロとなり、体重53キロの貧弱な72歳の年金生活者には炎天下での走行はかなり厳しい。地図を見ると、トルコ内陸部は丘陵や山岳地帯でありイスタンブール空港から市内までの40キロですら坂道ばかりで大半は自転車を降りて押し歩いて登るという難行苦行。初日で内陸部ルートは断然放棄。

 かわりに絶景続きのマルマラ海沿いにダーダネルス海峡まで西進して、その後エーゲ海沿いに南下して、さらに地中海沿いに東進するというルートを取ることに決めた。そして約80日間で海沿いに行けるところまで行くことにした。

 その結果、放浪期間中はほぼ毎日右手に海の絶景を眺めながら走り、押し歩くという我が人生で最高の贅沢な旅となった。7月から8月中旬まで日中の最高温度は43度を記録する灼熱地獄であったが、暑熱順化したのか2週間ほどで慣れてしまった。

初日からトラブル続きでテンションは急降下

荷物を満載した20インチの折り畳み自転車。ギョルヤズ村の古代ロー マの遺跡にて

 7月4日。午前4時にタイ航空機はイスタンブール航空に着陸。5時から自転車を組み立てるが輸送中のラフ・ハンドリングで荷台の留め金が2カ所破損。さらに前輪のタイヤの空気が入らない。パンクではなくバルブの破損であった。あれやこれや修理修繕して走れる状態になるまで2時間半も費やした。スマホのシムカードを買って市内への道順をチェックして、日本から持参したお菓子で腹ごしらえして空港ターミナルを9時に出発。

 どうもグーグルマップと実際の道路が一致しないので何回か空港一帯を警備している警官に「イスタンブール市内へ行きたい」と英語で聞いて1時間ほど走ったが、なんと空港の出発ターミナルに着いてしまった。いずれの警察官も英語が十分理解できずイスタンブール空港への道を指していたと後で分かった。こうして10時に再スタート。市内のホステルまで40数キロ。

初日からトルコ男の熱烈歓迎「暑いから乗って行け」

モスクの庭に設営したお1人様用の山岳軽量テント

 グーグルマップを仔細にチェックしながら何とか市内への幹線道路に辿り着いた。強烈な太陽で周辺の草が夏枯れしている。しかも気が遠くなるような長い上り坂である。自転車を降りて押し歩くこと30分。白い商用大型バンが追い越してから数十メートル先に停車した。いかつい顔の若いドライバーが車に乗れと手招きしている。

 彼はバンのスライドドアを開けると荷物を満載した自転車をひょいと持ち上げて積み込んだ。あまりの怪力に唖然。走り始めると質問攻めだ。青年は英語はダメなのでトルコ語で聞いてくる。トルコ語はメルハバ(こんにちは)しか知らないが「ジャポン(日本人)」と答えると破顔一笑して握手を求めてくる。

 カーステレオのボリュームを上げてトルコ音楽を聞かせてくれる。さらにスマホの翻訳アプリであれこれ聞いてくる。日本の老人が自転車でキャンプしながらトルコを巡ることを理解して、彼は大いに感激した様子でさらにテンションが上がる。仕事があるのでホステルまで送れないが市内の路線バスターミナルまで乗せてやるという。

 猛スピードで先行車をパッシングしながら煽り運転で排除する。煙草を吸いながら右手でスマホを操作しながらシフトチェンジもする。今回の放浪旅では4~5回トラックやバンに乗せてもらったが、ハイテンション+神風運転+喫煙+トルコ音楽+スマホ操作は全員に共通していた。

 ちなみに筆者は基本的にヒッチハイクはやらない。あくまで自力本願主義である。しかし坂道の連続で難行苦行しているときにオファーを受けると素直に乗せてもらう。正直なところ“干天に慈雨”である。


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