2025年12月5日(金)

古希バックパッカー海外放浪記

2025年8月17日

(2025.2.9~5.9 89日間 総費用66万7000円〈航空券含む〉)

市場に溢れる中国雑貨、駆逐されるローカルの中小生産者

 3月10日。チリ南部の人口25万人の港湾都市プエルトモントの中心地に、中国雑貨の店があった。感じの良い30台前半の女性がキャッシャーにいた。「女老板(女性オーナー)か?」と聞いたら、「旦那がオーナー」と笑った。夫婦ともに江蘇省出身でコロナが収束した3年前に旦那が店をオープン。本人は1年前に移住したと。商品は100%中国産の輸入雑貨だ。

サンチアゴ中心部のオイギンス通りの歩道上の現地人の中国雑貨露店と中国 人経営の 中国雑貨ショップ

 店内を見て回るとボールペン、蛍光ペンなどは日本の100円ショップ並み。注)ちなみにチリの物価は円貨換算すると円安もあるので日本より2~3割くらい高い。チリでは卵が50円、缶ビール500mlが250円~400円である。

 他方でノート類、バインダーなどは日本より2~3割高い。店内で物色していた地元の中年紳士も同意見で「それほど安くはない。開業当初より高くなった」との評価。「中国国内の物価も上昇して輸入価格が上がったことも原因だ。そして中国雑貨の氾濫でチリの中小生産者が潰れてしまい、中国雑貨ショップが容易に値上げできるようになったことが問題だ」と、地場産業消滅の問題を指摘した。ホステルの女将も「中国人経営の中国雑貨ショップは、数年間で4~5軒も増えたし市郊外には大型店もオープンした。しかし総じて以前ほど安くはない」と中年紳士の見解を支持した。

サンチアゴの中国雑貨ストリート

 3月17日。サンチアゴ中心部のオイギンス通りのモネダ宮殿から、東へ500メートルの区間は歩道の両側が、中国雑貨露天商に占拠されている。売子は全員地元民だ。そして歩道に面したビルディングには、中国雑貨店や中国系ホテルが軒を連ねている。大半のビルディングは中国人オーナーが所有している。こうした大型中国雑貨店では多数の現地人が雇われている。そしてレジ係りだけが中国人という店が多い。

 衣料品・靴などファッション中心のショップの経営者は、東北地方出身。売場を仕切っているのは福建省出身の若い女性だ。スペイン語で現地人スタッフに指示をしており、スペイン語が達者だ。大学を卒業して募集広告に応募して2年前に移住。本国で就職できず、高給に釣られてチリに来たという。店の売れ行きは好調で新店舗を探していると。

 モネダ宮殿の近くの中国食品卸店。中華料理の食材がメインで、中華レストランや在留中国人相手の店だ。店番はチリ人青年1人。青年によると、在留中国人がどんどん増えており、彼らは車で来店してまとめ買いするという。

 オーナーは中国人だが、年に数回サンチアゴに来るだけで別の事業に忙しいようだ。

サンタルシアの丘の中国人観光団の目的は南極旅行

バルパライソの海軍本部前広場でガイドの説明を聞いている中国人観光団

 サンチアゴ中心部にあるサンタルシアの丘は、サンチアゴ市街地とアンデス山脈を望見できる観光名所だ。そこで30人ほどの中国人観光団に遭遇した。40から60代で、大半が夫婦連れのようだ。出身地を聞いたら広州、成都、北京、長春とバラバラだ。注)通常中国の観光団は同じ都市の住人がメンバーである。例えば広州南美旅游団(広州南米旅行団)というような名称がホテルやバスに書いてある。

 南極大陸が彼らの目的地だった。アルゼンチン⇔南極の個人での渡航費用は船でも飛行機でも100~200万円と聞いている。旅行会社が中国全土から富裕層の旅行客を募集したのだった。服装も皆さんかなりお洒落である。ちなみに日本の某旅行社が募集している東京発15日間の南極クルーズツアーは330万円である。

 今回の南米旅行ではブエノスアイレス、パタゴニア各地、バルパライソ、アタカマ砂漠などの有名観光地では必ず中国人観光団を見かけた。次に頻繁に見かけたのは韓国人観光団である。ちなみに日本人観光団はゼロだった。

 中国人観光団は、過去10年で様変わりしている。お洒落で礼儀正しく規律ある集団になってきたと改めて感じた。やはり“衣食足って礼節を知る”ではないが、経済的余裕と先進大国意識が中国人の行動様式を変貌させたのであろうか。

チリ最大の港湾都市バルパライソの中国マーケット

 バルパライソの目抜き通りではわずか100メートルの間に3軒の中国雑貨ショップがあった。1軒目は100円ショップのような品揃え、2軒目は雑貨と現地人向け食品、3軒目はファンシーアイテム中心。2軒目のオーナーは、広東省仏山出身30代後半でチリ在住6年、4年前に開業。

 長距離バスターミナルまでの300メートルは、歩道に中国雑貨が溢れかえっていた。バス旅行者向けの旅行カバン、魔法瓶、電器具、衣料、靴が多い。やはり売子は現地人である。おそらく中国人の卸元がいるのだろう。

バルパライソの長距離バスターミナル付近の中国雑貨露店商の現地人夫婦。 衣料、水筒、魔法瓶、バッグ類など旅行用品を売っている。特に魔法瓶は南米人の大好 きなマテ茶を淹れるため旅の重要アイテム

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