2025年11月17日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年10月29日

 今月初め、ドイツ連邦議会は司法省の要請を受け、クラー議員の免責特権を解除したと発表した。同日、ドレスデン検察庁は、欧州議会の議員在任中に中国から賄賂を受け取った疑いで、同議員の事務所を捜索したと発表した。クラー氏は、「告発は荒唐無稽で捏造されたものであり、純粋に政治的動機によるものだ」と投稿した。

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第3国人を利用する事例も

 ロシアによるウクライナ侵攻以降、中露北朝鮮の連携は着実に強化され、欧州諸国では、ドローンの飛来、選挙干渉、偽情報の拡散、海底ケーブルの切断、サイバー攻撃など多様な形でロシアの脅威が増加している。同時にドイツや英国では中国の諜報活動、中国政府による「国境を越えた弾圧」に対する懸念も年々強まっている。

 この論説以外の、ドイツにおけるスパイ事例を見てみると、例えば、(1)2025年8月、ドイツ連邦検察は、「極めて機密性の高い米軍情報を中国に提供しようとした疑いで、アメリカ国籍のマーティン・D を逮捕起訴した」と公表した。マーティンは17年~ 23年春まで米国防省の民間契約業者に勤務し20年以降はドイツ駐留米軍基地で働いていた。

(2)7月には、ベッチーナ教育・研究大臣が、「中国奨学金評議会(CSC)から奨学金を得ている中国人学生はスパイ行為を行うリスクが高いので、中国との交換留学制度を見直す必要がある」との考えを示し、バイエルン州の大学がCSCの中国人奨学生を受入れないと決定したことを歓迎した。

(3)更に、24年4月には、ドイツ連邦検察は、22年6月以前から軍事利用できる技術に関する情報を中国の諜報機関のために集めていた容疑で、ドイツ人3人を逮捕した。

 このように中国の諜報活動の手段は、中国人だけでなく、第3国人を活用する事例も多い。また、「千粒の砂」と言われ、所謂工作員だけでなく、普通の中国人・留学生を使って、砂浜の粒をかき集めるように広く細かな情報を収集する。また、対象も中国批判をする人に加え、政治、軍事、産業、科学等あらゆる分野に及んでいる。


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