2025年12月8日(月)

食の「危険」情報の真実

2025年10月29日

 このワクチンの費用対効果に関しては、ワクチンの効果を上げるためにどれだけ余分な費用がかかるかの指標としてICER(Incremental Cost-Effectiveness Ratio、日本語訳は増分費用効果比)が論議されている。この指標は一般に500万円以下なら、費用を投じても関連疾患を防ぐ効果が高いとされる。男性が接種すれば、女性の子宮頸がんを予防できるだけでなく、男女双方の肛門がんや中咽頭がん、尖圭コンジローマなども減らすことができる。

 同協議会は要望書で「女性の定期接種率が30%でキャッチアップ接種率が50%の場合、男性の定期接種率を15%と仮定して、男女ともに定期接種を行った場合のICERは約480万円となる」といった数字を挙げて、日本での男性の定期接種は費用対効果でも優れていると主張している。

男女そろっての接種に「カップル割」を!

 男性の接種については、4価ワクチンに関しては、東京都の23区をはじめ、北海道、青森、秋田、山形、茨城、埼玉、千葉、愛知などの約50の自治体がすでに独自に助成しているが、9価ワクチンへの助成はこれからだ。

 医療系学生を中心に活動する学生団体「Vcan」は学校への出前授業などを通じてHPVワクチン接種の重要性などを啓発する活動を行っているが、その活動の中で「男女がカップルで接種を受けたときは、カップル割があれば、接種率が上がるのでは」といったアイデアが出たという。是非、自治体で実施してほしいアイデアだ。

 9価ワクチンの接種費用は医療機関で異なるが、約8万〜10万円だ。若い男性が自己負担で受けるには高い額だ。

 今後、日本でも男性の定期接種は実現するのか。HPVワクチン問題に詳しい宮城悦子・横浜市立大学副学長(医学部産婦人科学教室教授)は男性の定期接種の意義について以下のように述べる。

 「費用対効果の評価も重要だが、子宮頸がんで日本の女性が年間約3000人亡くなり、1万人以上が浸潤がんの治療を受けており、多くの若い女性が子を産む力を失う結果となっていることの社会的損失は計り知れない。今ではワクチンで男性のHPV関連疾患を予防することがわかっているのに女性だけが定期接種となっているのは、先進国の一員として問題だ。ジェンダー平等の視点からも、男女区別のない定期接種化の実現を期待したい」

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