子宮頸がんや肛門がんなどを予防する9価HPVワクチン(HPVはヒトパピローマウイルス)の男性への接種が8月下旬、日本でようやく承認された。ただ、接種費用は依然として自己負担のままだ。
主要7カ国(G7:日本、米国、カナダ、フランス、英国、ドイツ、イタリア)の中で、男性の定期接種(公費助成による接種)が実現していないのは日本だけ。はたしてこのままでよいのだろうか。
80以上の国・地域で男女の定期接種
HPV(ヒトパピローマウイルス)はごくありふれたウイルスで200種類以上の型がある。そのうち感染力の高い十数種類が女性の子宮頸がんだけでなく、男女の肛門がんや中咽頭がん、男性の陰茎がん、男女の性器周辺にイボができる尖圭(せんけい)コンジローマなどの原因となる。
日本国内ではこれまでHPVは主に女性の子宮頸がんを引き起こすウイルスとして知られてきたが、実は男女双方のがんにかかわるウイルスだという認識がようやく浸透し始めた。
世界を見渡すと、米国、豪州、カナダ、英国、フランス、ドイツでは早くも2006~08年に男女への接種が始まり、これら6カ国では、9価ワクチン(製品名はシルガード9)が男女とも公費助成で受けられる定期接種が実現している。しかも米国、豪州、カナダ、英国では男女とも接種率が8割前後と高い。
世界保健機関(WHO)によると、25年7月現在、80以上の国・地域でHPVワクチン接種が男女ともに公費助成による定期接種が導入されている。
同じHPVワクチンでも2価、4価、9価のワクチンがあるが、この「価」につく数字はワクチンで予防できるウイルスの種類の数を表す。当然ながら、9価のワクチンの方がより多くのウイルスに対処できるため、がんを予防できる範囲は広い。
こうした世界の流れに対して、日本では20年に女性を対象に9価ワクチンが薬事承認されたが、男性については4価ワクチンが20年に承認されたものの、9価ワクチンは今年8月になってようやく承認された。
