──藤井先生の研究分野は、地震予知や噴火予知など、社会的要請にも応えていかなければならない分野でもありますね。
藤井氏:理学の研究者は、分からないから研究したい、しなければならないと思っている。ところが社会からは、すぐに解答を求められる。なかなかそこに到達できず、どうしても社会との間にギャップが生じるんですよ。
とくに地震予知や噴火予知の研究は、ゴールが与えられていて、そこに向かって課題を解決していくための研究なので、通常の理学の研究とはちょっと違うのです。
わたし自身は、10年以上前から富士山の研究も始めました。富士山のことをきちんと理解して、それをどのように噴火予知に結びつけられるのか、いま一生懸命考えているところです。
研究者たちに、短期間で成果を求めるばかりでは、研究活動をだんだん歪めることになりかねません。理学者が自分のつよい興味のもと、自由に研究できる場をきちんと残しておかないと、科学の発展は望めないのではないでしょうか。
──本日はありがとうございました。
藤井敏嗣(ふじい・としつぐ)
NPO法人環境防災総合政策研究機構理事、環境・防災研究所所長。東京大学地震研究所教授、同研究所所長、東京大学理事・副学長などを経て現職。2014年4月より、山梨県富士山科学研究所所長を併任。気象庁火山噴火予知連絡会会長のほか、日本火山学会会長、中央防災会議「災害教訓の継承に関する専門委員会」委員、「三宅島火山活動検討委員会」座長などを歴任、マグマ学・岩石学の第一人者。著書に『地震・津波と火山の事典』(共編著、丸善、2008年)、『岩波講座 地球惑星科学4 地球の観測』(共著、岩波書店、1996年)などがある。
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