2025年11月17日(月)

古希バックパッカー海外放浪記

2025年11月2日

西部トルコの沿海部を走破してもトルコの全体像は把握できないという限界

古都ブルサのウル・ジャーミイの大礼拝堂の泉の前で熱心に祈る婦人。 保守的イスラム教徒がエルドアン大統領の岩盤支持層のようだが

 トルコは地域格差が大きいと言われている。イスタンブール、アンカラ、イズミールなどの大都市では人々の服装も大半は欧米と変わらないように感じた。ところが地方に行くとイスラム帽子の男性や顔や体を覆う伝統的イスラム風の女性を多く見かけた。一般にトルコ東部ではモスクの礼拝に参加する敬虔なイスラム教徒が多く、逆にトルコ西部では西洋式の生活をするイスラム教徒が多いと言われている。

 筆者はイスタンブール➡ブルサ➡チャナッカレ➡ベルガマ➡チェシメ➡イズミール➡エフェス➡ボドルム➡マルマリス➡フェティエ➡オリンポス➡アンタルヤ➡アランヤ➡(バスでイスタンブールへ)と、トルコ東部を海沿いに反時計回りに自転車旅行したので、欧米観光客の多いリゾートや近代都市での見聞が比較的に多い。

 他方で鄙びた村落や田舎の小さなモスク(トルコ語ではイスラム寺院は“ジャーミィ”であるが本稿では日本で一般的名称の“モスク”と記す)で過ごした時間も少なからずある。いずれにせよトルコ東部や内陸部のアナトリアは未踏なので筆者の見聞は“西欧化したトルコ”に偏っていると言わざるを得ない。

反エルドアン派知識人のエルドアン批判

マルマラ海沿いの鄙びた村のモスク。こうした村のモスクでは礼拝に参 集する信者が多い

 7月18日。チャイハネでチャナッカレ在住の70歳の男性と遭遇した。彼はホテル、レストランなどを経営している。同時にトルコの歴史についての著作もある。ロンドンに留学した経験もあり“進歩的知識人”という印象を持った。彼のエルドアン批判は整理すると以下の通り:

  1.  反対派・批判勢力を抑圧・弾圧して自由な言論を封殺している。マスメディアも2社以外はエルドアン支持派。2社のうち1社はTV局だが現在10日間の放送禁止処分。
  2. 経済ではエルドアンと近い5つの企業グループが権益を独占してエルドアン派の資金源となっているという汚職構造が出来上がっている。
  3. 国軍・警察・検察・裁判所、一般行政官僚組織のトップ・幹部は全てエルドアン支持者に置き換えられた。
  4. 国会は与党と協力政党が絶対多数を占めている。宗教界の支持を受ける野党候補も工作を受けて与党支持へ転向。イスタンブール市長の有力候補は罪状を捏造されて逮捕され立候補できず。トルコ各地のエルドアン反対派の市長は特別査察により賄賂、腐敗を摘発され失脚。代わりにエルドアン派の役人を市長に据える。
  5. 一般国民はエルドアンの長年続く強権政治にあきらめムード。残念なことに強権政治に慣れてしまっている。
  6. エルドアンは汎イスラム主義者(注:エルドアンは宗教指導者養成学校を卒業後に大学で経済商学を学んだ保守的イスラム教徒)であり民族を問わずイスラム教徒であれば同胞として受け容れる。アラブ人のシリア難民(500万人とも推定される)をトルコは受け容れている。生活費補助・公的医療無償・税金免除などの優遇策を提供。トルコの市民権を得たシリア人(ネット情報では凡そ20万人)は投票権行使してエルドアンを支持。シリア新政権が発足してシリア国内が安定してもシリア難民を強制送還しない。トルコ国民の負担で難民を受容する政策への不満と批判。

 いろいろな人からエルドアン批判を聞いたが上記の70歳の進歩的知識人の論点はアンチ・エルドアンの人々の平均的かつ典型的な見解のように思われる。

以上 次回に続く

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