韓国の古都・慶州で10月31日から11月1日にかけて、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれた。日本では高市早苗首相と李在明大統領の会談がそつなく終わったことが報じられたが、国防日報は原子力潜水艦導入とカナダの次世代潜水艦事業への期待が紙面を占めた。
日本人には唐突な韓国の原子力潜水艦保有論
30日のヘッドライン「原子力潜水艦の燃料供給を認めることを決断してほしい」は、日本人にとってあまりに唐突だろう。また原子力潜水艦と戦略ミサイル原子力潜水艦(SSBN)を混同している人も多いので、韓国が核保有国入りを目指していると誤解する向きも出てくるかもしれない。
この記事は、10月29日に行われた米韓首脳会談で、李在明大統領がトランプ大統領に対して、原子力潜水艦の燃料提供を迫ったことを伝えたもの。李大統領は「十分に詳しい説明ができず、若干の誤解がある」と前置きして、原子力潜水艦が必要な理由を次のように語った。
「ディーゼル潜水艦は潜航能力が劣るため、北朝鮮や中国の潜水艦追尾活動に制限がある。(中略)燃料供給を許可してもらい、我々の技術で通常兵器を搭載した潜水艦を数隻建造し、朝鮮半島海域の防衛活動を行えば、米軍の負担も減るだろう」
そして、トランプ大統領は30日、自身のSNSで韓国の原子力潜水艦建造を承認したことと、米国のフィラデルフィア造船所で建造されることを明かした。
この両首脳のやり取りに多くの日本人は驚いたが、実のところ韓国ではかなり早い時期から原子力潜水艦保有の動きがあった。北朝鮮の核不拡散条約(NPT)脱退に端を発する第2次朝鮮戦争危機に際して、金泳三大統領が建造を命じたことが始まりだ。以降、盧武鉉政権で362事業団という原子力潜水艦建造プロジェクトが発足したが、わずか1年で頓挫したという。
当時の様子を報じた2004年1月26日付の朝鮮日報は、プロジェクトについて「日韓で竹島を巡る神経戦が続き、日本で核武装の主張が出ている中で、軍は日本と中国など周辺国の脅威に対処するため4000トン級原子力潜水艦数隻を2021年以降実戦配備する案を秘密裏に検討中」と報じていた。

