2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年10月23日

 Economist誌9月27日号の社説が、成果を誇示したいトランプ大統領は北朝鮮との取引に応じ、結果的に同盟国である韓国や日本を売り渡してしまう危険性がある、と警告している。要旨は次の通り。

(ロイター/アフロ・UPI/アフロ)

 トランプは第一次政権時、当初は核戦争で北朝鮮を脅し、次に金正恩と一連の首脳会談を行った。この芝居がかった行動は新聞の大見出しは生んだが、進展はもたらさなかった。

 そして今トランプは米国に対する北朝鮮の脅威を縮小し、あわよくば朝鮮戦争の正式な終結を仲介することも期待して第二幕を欲している。他方、金正恩は自分の条件に従うなら会ってもよいと言っているが、その条件はトランプ第一次政権時よりも悪いものになるのが必至だ。

 北朝鮮は当時よりさらに危険になっている。保有する兵器は増え、性能も向上し、その大陸間弾道ミサイルはトランプのフロリダの別荘も狙える。また金正恩は自国の社会と経済への締め付けも強化している。

 外部世界も金正恩に都合のよい形に変わってきた。金正恩はウクライナ戦争を利用してロシアと戦時パートナーシップを築き、さらにそれによって北朝鮮の主たるパトロンという立場を失いたくない中国を不安にさせている。

 米国の北朝鮮政策は長年2つの陣営に分裂してきた。強硬派は、抑止と制裁を強化し金王朝が転覆されるのを待とうとし、関与派は、手を差し伸べる太陽政策で金一族は軟化するかもしれないと反論する。

 しかし、どちらも功を奏しなかった。元々金政権が自らの存続の最善の保証と見る兵器を制裁により諦める可能性はほとんどなかったのであり、今や制裁が効く可能性はさらに小さくなった。


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