韓国が開けたかもしれないパンドラの箱
ヘッドラインではないが、31日紙面に「韓国・カナダ『国防・安保戦略的パートナーとして協力深化』両国首脳会談で共同声明採択」という記事が掲載された。先週の「カナダの次期潜水艦を狙う韓国の国産潜水艦」と関連するものだ。記事はカナダ首相と国防相が3600トン級潜水艦の建造現場を視察したことを伝えた。
この3600トン級潜水艦とは、島山安昌浩級のこと。6本の垂直発射管(VLS)を装備し、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「玄武-4.4」を搭載する同級は、韓国が今後建造する原子力潜水艦のプロトタイプといったところだ。韓国は同級を北朝鮮の大規模攻撃に対応するキルチェーン(先制攻撃)の“核心戦略兵器”と位置付けている。
しかし、通常弾頭の短距離弾道ミサイルしか搭載できない原子力潜水艦に戦略的な価値があるのか怪しい。では、韓国の狙いはどこにあるのか?
韓国軍元少佐の李相會氏は論考「韓国海軍の新型潜水艦が持つ技術的特性と運用上の含意」(笹川平和財団「国際情報ネットワーク分析」2024年7月18日)で、韓国潜水艦が短距離弾道ミサイルを搭載していることについて、「韓国が敵の核攻撃(第一撃)を受けた後でも残存して報復攻撃できる、いわゆる第二撃能力を保有する数少ない国の一つになった」と評価している。
李氏は「核弾頭がないという根本的な限界」があることを指摘しているが、これこそが韓国が狙う次のステップだろう。つまり、計画に行き着く先は戦略ミサイル原子力潜水艦(SSBM)の保有だ。
韓国の政府系シンクタンク「世宗研究所」の鄭成長副所長は李在明政権発足直後の6月、「原子力潜水艦建造で米国が韓国と協力することが両国にとって大きな力になる」として、「日韓が原子力潜水艦を保有し、韓国が北朝鮮を、日本が中国を牽制することが米国の国家利益にも適する」とする意見書を出していた(「トランプ2.0時代韓国の原子力潜水艦保有のための国際協力方向」(韓国語)、世宗研究所「世宗制作ブリーフ2025-12」2025年6月17日)。
韓国の選択は、日本の原子力潜水艦保有というパンドラの箱を開けてしまったのだろうか。
