自治体間の協力はできなかったのか
こうした個々の自治体の厳しい状況を改善するため、自治体同士で協力する動きが進んでいる。本年1月の能登半島地震の際にも、全国の自治体からの応援要員が被災地に派遣され、自治体の業務をサポートしている。この助け合いの仕組みを利用して他の自治体が秋田県にクマ対策の支援要員を派遣できなかったのだろうか。
しかし、クマは九州を除く全国で生息しており、今年は既に北海道、東北、北関東、北陸、中部など、ほぼ日本の東半分の地域でクマの出没やクマによる被害が報告されている。また、現時点でクマの出没が確認されていない地域でも、出没や被害の発生は常に起こり得る。その上、昨今のクマ被害は大々的にメディアで報道され、世間からの注目が高い。
こうした中、各自治体はクマ対策に関して知見のある職員やハンターを秋田県に派遣し、自らの自治体の対応力を低下させることは難しいだろう。こうして、クマ被害では自治体間協力が実行できず、秋田県にとって残された手段は自衛隊への協力要請であったと思われる。
増大する自衛隊への期待
人口減少・少子高齢化が進行している日本では、生産年齢人口の減少による慢性的な人手不足が続くことが予想される。また、生産年齢人口は東京都を除く道府県で減少しており、都市部に比べて地方の減少率が大きい。こうした傾向を踏まえれば、今後、処遇改善などを行ったとしても、地方の自治体が職員を増やせるとは考えにくい。
こうした中、東日本大震災などの大規模災害において自衛隊が大きな役割を果たしたこと、首都直下地震や南海トラフ地震などの新たな大規模災害への警戒感の高まり、鳥インフルエンザ対応への自衛隊の度重なる派遣などを背景に、多くの自治体は「困ったことがあれば自衛隊が助けてくれる」ことを前提に危機管理を考える傾向を強めている。その一方、自衛隊が来てくれない場合を想定した検討が真剣に行われているとは感じられない。
