2025年12月13日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2025年11月21日

 この盲点を衝いた連合国軍総司令部(GHQ)の対日占領政策を過剰なまでに、時に屈辱的なまでに受け入れた結果、日本人は政治や外交が軍事問題に関わることを極端に避けることが「民主的」であり「平和主義」であると、これまた過度に情緒的に思い込むことに馴らされてしまった。かくて長期にわたって日本社会を闊歩した「戦後リベラリズム」の風潮は、日本を取り巻く内外環境が激変する中でも生き残り現在に至っている。この80年間、日本では国際社会の現実とは余りにもかけ離れた議論がまかり通ってしまったわけだ。

 こう考えながら国会における今回の岡田議員の発言を改めて読み返してみるなら、これこそ、軍事問題をタブー視したうえで日本を取り巻く国際環境をイデオロギーや好き嫌いの感情で論じてきた弊害の典型といえるだろう。

 羮(あつもの)に懲りてナマスの喩えではないが、岡田議員の国会における一連の振る舞いに象徴的に現われているのは、与野党の思惑やイデオロギーの枠を越えた国家の安全保障に関する最低限の共通認識すら持ち合わせていない政治の脆弱性であり、その自覚すら持たない“選良”が少なくないという政界の醜態であり、そういった現状を助長して止まない大手メディアの惨状――これも日本の禍機――であることを、敢えて指摘しておきたい。

一挙に解決はできない

 習近平政権は、なぜ、かくも台湾統一を掲げ続けるのか。それが共産党の党是であり、中華人民共和国の国是であり、断固として実現させなければならない毛沢東の遺志であり、習近平政権の存在証明につながるからである。だが、それはあくまでも彼らの一方的な事情に過ぎないことも、また事実だろう。

 とはいえ日本独自の力で中国の動きに掣肘を加えることは至難以上に至難であるうえに、歴史的にも地政学的にも日本が米中両国の狭間に置かれていることも、また峻厳なる事実である。

 日本が解決を逼られている難問は、一つの政権で一挙に解決できるほどに生易しいものでないことも、また事実だ。そこで高市政権には、これら数多くの事実の中の1つ、日本が繰り返してきた対中外交の歪みを静かに、しかも厳しく糺すことを切にお願いしたい。

Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る