〝何でもあり〟というのが「超」が付くデジタル時代の特徴だ。20世紀きっての名宰相に数えられるジェームズ・キャラハン元英首相の印象的な言葉を借りるなら、「真実がブーツを履く前に嘘は世界を半周している」。もっとも、これは悪用されたAIの偽造の威力を誰も想像すらしていなかった頃の言葉である。
超デジタル時代で
英国が果たすべき役割
オンライン・メディアや巨大プラットフォーム企業の影響力を最も効果的に抑制する要因は、内部の構造的欠陥にあると言える。信頼できない情報の慢性的な過剰供給と矛盾、お粗末な質、話題の非持続性、権力の腐敗、完全な信頼性の欠如──。これらすべてが偽情報や歪み、移ろいやすさと入り混じっている。これらはいずれ自らの価値を損ない、空虚なものにするだろう。
一方、この領域はいま我々が生きている「結節点」でもあり、我々の思考や発想、現実に何が起きているのかという分析を形作っている場でもある。だからこそ、テクノロジーが人間の生活や人間関係、そして世界秩序に及ぼす二面的な影響が最も明確に現れていると言える。
そこではリベラルな価値観を持った責任ある国々の連携が再び機能し、オンライン上の〝雑音〟ではなく、常識に耳を傾けるべき場所であらねばならない。正しい分析と正しい対応ができれば、まだ民主主義を立て直し、強化することができる。さらには、多様な資本主義が普及、拡大していく可能性もある。だからこそ、我々が優先すべきは、紛れもなくこの領域であり、現代社会という巨大なネットワークが、我々を生かし、そして繁栄させる基盤でもある。
世界秩序の構造の崩壊はただ危険なだけではない。長年、できる限り開放的であろうとしてきた英国にとっては特に、これは致命的だ。
すでに大きく変貌した世界にあって、英国は島国ならではの創意工夫を駆使し、新しい英国のリソースと貢献を生み出していかなければならない。それは、絶対的に揺るぎない法の支配と、世界秩序を支える格調ある制度の再構築という二つの力を結びつけることへの貢献だ。
我々は再び手を取り合い、こうした重要な優先事項を掲げ、ネットワーク化された世界において共通の立場に立ち、目的を達成しなければならない。それこそが我々一人ひとりをも互いに守ることにつながる。
