2025年12月8日(月)

Wedge OPINION

2025年12月8日

 1945年に第二次世界大戦が終わった時、世界の秩序と安定を支える国際機関は、ほぼ完全に崩れ落ちていた。

離脱や分断の余波が残るEU。再び共通の土台を築けるのか、その正念場を迎えている(ZPAGISTOCK/GETTYIMAGES)

 あの時代の賢明な政治家は、最後に広島への原爆投下の灰と殺戮に至る5年半の血みどろの戦争の恐怖を胸に刻み、「二度と繰り返さない」という箴言を守ることを誓った。そして実際、戦争終結の前から完全な復興について考え始めていた。

 立派な政治家は、強力な国際組織が尊敬と信頼を取り戻せなければ、平和も安定も貿易の拡大もなく、さらには民主主義そのものが潰えると考えていた。だからこそ、そこに優先的に取り組んだ。もちろん、その選択は正しかった。その後数十年間続く東西冷戦が近づいていたことを考えると、なおのことそう言える。

 彼らには国家の上位に立つ強固な制度や枠組みがなければ、規則や審判なしで国際的な「ゲーム」に臨むようなものだということが分かっていた。ルールや信頼されるレフェリー、抑制策が存在しない競技が必ずそうなるように、すぐにカオス(混沌)と無秩序に陥っていくと。

 総じて言えば、当時の政治指導者とその顧問は復興の仕事をしっかり成し遂げ、45年に米サンフランシスコで国連憲章が調印され、国際通貨基金(IMF)と世界銀行、当時は関税貿易一般協定(GATT)と呼ばれ、後に世界貿易機関(WTO)に名称変更される新たな貿易規制機関、国際司法裁判所(ICJ)、その他数々の新団体が創設された。一方、ソビエト連邦との様々な軍縮交渉が開始され、人類に対する最大の危険とも言える「核」について、核拡散防止条約(NPT)の締結に向けた基盤が整えられると、冷戦の緊張が緩和された。

 その後に北大西洋条約機構(NATO)と欧州連合(EU)の前身となる欧州経済共同体(EEC)が誕生した。20世紀半ば当時、こうした機関の創設は、より平和的で安定した新秩序へ向けた完全に合理的で賢明なステップのように思われた。

 結局のところ、二度の世界大戦で自らを引き裂いたのが欧州だったのだから、第三次大戦を防ぐために欧州の統合を模索することは理にかなっていた。また、ファシズムの打倒と民主主義の擁護に米国が重要な役割を果たした以上、大西洋の列強が「西側」を名乗り、暗い全体主義的勢力に対して一致団結することも、同じく道理にかなっていた。

 それが20世紀の「決着」であり、ソ連の侵略行為や、主に半導体・デジタル革命の発現を原動力とした中国(そしてアジア全体)の目覚ましい台頭によって、揺さぶられることはあっても破壊されることはなかった。

 話が本当にそれほど単純だったかどうかは定かでない。これは歴史学者が議論すべき問題だ。だが、絶対的な確信をもって言えることは、時計の針を80年進めた今、ほぼすべてが変わり、それも数少ない僻地を除く地球全体が劇的に変わったということだ。


新着記事

»もっと見る