首相の責任を追及する時ではない
日本国内では当初、駐大阪総領事を「ペルソナ・ノン・グラータ」(好ましくない人物)として国外退去にすべきという強硬論が台頭したが、そうした強硬論はいまのところ見送られている。政府の反応、対応は比較的、抑制されている。
それでも、今回の答弁を引き出した立憲民主党、一部メディアは高市批判のトーンを強める。
立憲民主党の野田佳彦代表は11月26日の党首討論で、「総理発言は政府、自民党内で調整されたものではなかった。独断専行で日中関係を悪化させたことにどう責任を感じているか」と、正面切って追及した。
首相は、先の習近平国家主席との会談で「戦略的互恵関係」を確認したことに言及するにとどまり、正面からの返答を避けた。高市首相らしい論点のすり替え、不誠実な逃げだったとしても、首相の〝責任〟を声高に追及する場面ではないだろう。矛先は高圧的な要求を振りかざしている中国にこそ向けられるべきだ。
高市発言を11月7日の衆院予算委員会で引き出した立憲民主党の岡田克也元外相も、「聞いてもいないのに北京政府がどうこうという議論を展開し、理解に苦しんだ。まずいと思って話題を変えた」(11月21日、東京新聞のインタビュー記事)と述べ、問題発言を誘い出すことが意図ではなかったことを強調している。
しかし、氏は質問にあたって、首相が昨年の自民党総裁選の際、今回と同様の発言をしていることに言及、記事の中でも「有事の瀬戸際など厳しい状況になったとき、間違った判断をするのではないかと心配している」(同)とことさら問題視している。岡田氏の説明を額面通りに受け取ることはできないだろう。
中国を利する石破前首相の発言
〝敵失〟を誘った野党が攻勢に出るのは、国会論戦の場では日常茶飯事といっていいが、与党内からも首相の責任追及の火の手があがるとなれば、話は変わってくる。
退陣後、動静が伝わってこなかった石破茂前首相が最近のインターネット番組で高市発言を批判。「日中国交正常化以後、歴代政権は注意しながら関係をマネージしてきた。言いたいことを言ってやったぜというものではない」(11月23日、ABEMA的ニュースショー)と強い調子で語った。
石破氏には、高市内閣がコメ増産を転換するなど自らの政策に変更を加えていることへの不快感があるのかもしれないが、外交問題について、前首相が公開の席で後任を指弾するのは、中国をほくそ笑ませるだけだろう。
