2025年12月12日(金)

Wedge OPINION

2025年11月21日

 高市早苗首相が韓国で中国の習近平国家主席と会談したわずか1週間後に、国会で台湾有事が集団的自衛権を行使可能な「存立危機事態」になり得ると答弁したことを受け、中国政府は大反発し、対抗措置を次々と展開している。対日批判は習氏自らが指示しており、日中対立の長期化は必至だ。

 今回のように首脳間の信頼が失われ、安全保障面で不測の事態が発生する危険性が高まった時に必要なのが、日本の政治家の対中パイプであるが、日中間の太い人脈が途絶えて久しい。今こそ、対中パイプの構築を真剣に考えるときだ。

日本の国会議員は習近平と直結するチャンネルを持っているのか?(出所:首相官邸HPより加工)

 高市首相は日中首脳会談に先立ち、トランプ米大統領との間で「日米同盟の新たな黄金時代」を確認した。日本の頭越しで米中ががっちりと手を結ぶ事態への危機感からトランプ・習近平会談前に、対中抑止力強化で一致したかっただろうが、日本にとって「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境」をもたらしている中国とのパイプをこのまま失い続ければ、大きな禍根を残しかねない。

 まずは歴史を振り返りたい。改革開放以降の日中関係において、日中リーダーの間に真の信頼に基づくパイプが築かれたケースとして、中曽根康弘首相と胡耀邦共産党総書記、野中広務元官房長官と曾慶紅国家副主席の関係が思い浮かぶ(肩書は当時)。中曽根と野中の下で働いた外務官僚に話を聞くと、胡は中曽根の「国家観」に、曾は野中の「信義」にそれぞれ魅かれたという。

 1985年の終戦の日に靖国神社に公式参拝した中曽根は、「親日」と保守派に批判された胡耀邦の立場を懸念して翌年の参拝を断念した。「野中・曾慶紅ライン」は、小泉純一郎首相の靖国神社参拝で首脳間に信頼がなくなり日中関係が危機に陥った際、「バックチャンネル」機能を果たした。


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