2025年12月13日(土)

Wedge OPINION

2025年11月21日

 筆者は生前の野中にインタビューしたことがある。曾は野中にこう語り掛けたという。「あなたは率直に話してくれる。日中関係で中国が気に入らないことも発言するが、それが結局、両国の信頼を構築することになる」。2002年4月、小泉首相が靖国参拝し、江沢民国家主席が大反発した直後にもかかわらず、江の最側近だった曾は野中との約束を果たすため、予定通り訪日を果たしたエピソードは有名だ。

 一方、親中派の大物と言われた二階俊博元自民党幹事長はどう評価されるべきか。15年に約3000人を引き連れて北京を訪れ、人民大会堂で習近平国家主席に直接、安倍晋三首相の親書を手渡した。その後も、首相以外で習近平と会える唯一無二の日本の政治家であった。

 しかし中国側は、常に二階氏の日本政界での影響力を見極め、利用していた側面が強い。自民党幹事長や総務会長、経産大臣を務めていた時には重用したが、既に政界引退が決まっていた24年8月、日中友好議員連盟会長として訪中した二階氏に対し、習近平は会わず、冷酷さをさらけ出した。

 習近平はこれまで日本の新首相の就任当日に祝電を送るのが慣例だった。菅義偉、岸田文雄、石破茂が首相に就けばそうした。しかし高市首相が就任して習近平が祝電を送ったかどうか明らかにしていない。つまり歓迎していないのだ。

反中世論が高まる中で
日本に求められること

 第一に靖国参拝を重視する高市氏の歴史観に疑念を持っている。靖国問題以上に警戒したのは台湾問題だった。高市氏は4月に訪台し、頼清徳総統と会見。7月に台湾の林佳竜外交部長の訪日が発覚し、中国政府は激怒したが、高市氏は林佳竜氏と面会していた。中国政府は高市内閣や自民党執行部が台湾との関係をさらに強化させようと目論んでいると見ている。習近平と会談した翌日に高市氏は台湾元行政院副院長(副首相)と会談。中国外交部報道官は、高市氏が「会談を強行し、SNSで大々的に宣伝した」と強く抗議した。

 高市氏の自民党総裁就任直後の10月8日、台湾の双十節(建国記念日)の祝賀行事が都内で開催された際も、古屋圭司自民党選対委員長(「日華議員懇談会」会長)、片山さつき財務大臣、萩生田光一自民党幹事長代行らが出席。そればかりか、超党派の国会議員も大挙して顔を出した。これらに続く高市氏の「台湾有事」発言である。

 しかし、日本の国会議員の台湾接近はある意味で当然の成り行きである。中国は12年に習近平がトップに就いて以降、経済面での依存関係や協調路線を放棄し、「国家の安全」を最優先政策に掲げた。

 尖閣諸島や東シナ海で日本の主権を威嚇する行為を繰り返し、日本人を「反スパイ法」違反で次々と拘束する─。一方で、台湾は民意を政治に反映させる「民主主義」を発展させ、「半導体」を武器に国際的影響力を高めている。いわば中国の姿勢が日本を中国から遠ざけ、台湾に引き寄せているのだ。さらにSNS上などで反中世論が高まる中、高圧的な習近平体制にすり寄って炎上したり中傷を受けたりしてまでリスクを取ろうとする政治家はほとんどいなくなった。


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