難民人口の増加が強みにも
これまでの4.5枠から8.5枠に拡大されたアジアでも、ヨルダンが初の本大会切符をつかんだ。ヨルダンの人口は1155万人。中東にありながら、石油の豊富なペルシャ湾地域ではないヨルダンは、天然ガスや農業、観光などが経済を支えている。
一方で、第二次世界大戦後のパレスチナ問題と密接に関わっており、大規模な難民の受け入れをしてきた。難民人口の増加は社会の大きな課題になっているが、サッカーにおいては、多層的な文化背景を持つ選手のバックボーンとなっているのも確かだ。
また、王族が熱心にサッカー環境の支援を進めてきた成果が、昨年のアジアカップにおける準優勝や今回のアジア最終予選でも実りを生んでいる。もちろん、アジアの出場枠が大幅に拡大したことでW杯本大会に出場するチャンスと考えるのは、同じく初出場を決めたウズベキスタンなど、多くの“第二勢力”にも言えることだが、選手の育成や国内リーグの底上げなど、もともと地盤があるところに数年来の成長が上積みされたのだ。
サッカーに吹き込まれる新たな熱量
キュラソーを象徴とする小国をはじめ、これまでW杯本大会と縁のなかった国の躍進は、32カ国から48カ国に拡大した出場枠と大きく関係していることは間違いない。しかし、出場枠の拡大は多くの国が代表チームやそのベースとなる国内リーグ、ディアスポラの活用など、国家を挙げた積極的なサッカーの強化に向かわせることになり、世界的なサッカー界の活性化につながっていることも確かだ。
本大会のレベル格差を懸念する声や、厳しい予選を勝ち抜き狭き門を通り抜けてこそW杯の価値があるという意見もあるだろう。しかし、出場枠の拡大は世界最大のスポーツイベントであるW杯に新たな熱量を吹き込んだ。あとは、これらの国が本大会に参加するだけで終わらず、強豪国を相手にどれだけの健闘を見せられるかが非常に楽しみだ。
