2025年12月16日(火)

WEDGE REPORT

2025年12月3日

一足早く不動産購入、オーバーツーリズム、爆買いが発生

 覚えておきたいことが3つある。1つ目として、香港は中国の一部であることから、中国とほぼ同じと考える人がいることについてだ。確かに20年に香港国家安全維持法(国安法)が施行され、政治的には中国色が強まったが、イギリスの植民地だった影響は依然として残っており、中国人と一緒にされるのを嫌う香港人は少なくない。

 2つ目は、03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響で香港経済が落ち込んだが、中国政府は香港政府と経済や貿易に関する緊密化協定(CEPA)を結び、香港経済の立て直しを始めたこと。その1つが、中国人観光客の個人旅行解禁だ。それまで中国の本土の人たちは、個人では自由に香港に行けなかったが、解禁後もパスポートは必要なものの、中国本土の観光客が大挙して香港に押し寄せ、爆買いが始まった。

香港の不動産店の外観

 3つ目は、国安法前に、人民元の上昇、政治的な安心感、資産の逃避から中国人が香港の不動産を買い始めた。中国人が香港の住宅を安全な外貨建て資産と捉えたのだ。

 これにより、住宅価格はさらに上昇した。米調査会社デモグラフィアによると24年の住宅価格の中央値は世帯年収の14.4倍で15年連続世界一だ。

 このように、オーバーツーリズム、爆買い、不動産価格の高騰と、香港は日本の先行事例になっている。

香港政府はどんな政策を打ったのか?

 香港政府は住宅上昇を受けてどんな政策を打ったのか? 住宅を購入する際、価格に連動して最高4.25%の印紙税を払う必要があるが、10年になると、購入後24カ月以内に売却する場合、保有期間によって5~15%の特別印紙税を課した。また12年には、非永久居民(事実上の外国人)らが住宅を取得する時には、購入価格の15%の追加印紙税を課した。

香港の高層マンション群

 他にも、香港の永久居民の同一人物が2軒目を購入する場合も、同じように15%の印紙税がかかるようにするなど、試行錯誤を繰り返した。それでも、03年以降は基本的右肩上がりなので、印紙税で値上がりを抑えていたとも言える。

 ところが、新型コロナウイルスが収束後、香港経済は低迷を続け、回復する兆しが見られず、25年の価格は12年レベルにまで下落した。香港政府は経済活性化のため印紙税を24年2月に廃止する決断を下した。


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