では、現在の香港の不動産状況はどうなのか?香港政府土地註冊処が発表した25年10月の不動産の各種取引状況によると、住宅物件の登録件数は5714件で、前月比1.3%増、前年同月比21.7%増だった。また、取引高合計は511億ドルで、前月比8.1%増、前年同月比37%増と増加傾向を示した。
中国人による購入実態はどうか。大手不動産会社、美聯物業(Midland)の調査によると、25年1~10月に中国本土の人が購入した新築・中古物件は前年同期比14.3%の1万1121件、取引総額は同2.7増の1065億4000万香港ドル(約2兆1352億円)と過去最高を更新した。
つまり、価格が大きく下がり、印紙税が廃止されると、今まで購入を諦めていた人が再び市場に参入し、不動産契約が再上昇し始めたのだ。
日本の現状
これに対して、日本の現状はどうなのか。国土交通省の新築マンションの取得状況についての実態調査によると、25年1~6月の取得者のうち国外に住所がある者による東京23区のマンションの取得者は24年の1.6%から3.5%に増加した。
この数字から見ると、外国人購入者が不動産価格に大きな影響を与えたとは言いにくい。ただ、日本人が総じて懸念しているのは、価格の上昇というだけでなく、中国…つまりイデオロギーが異なる国の人たちの不動産購入だ。わかりやすい例が、「水源地を買収され地下水が採取されている」といった声である。
日本は失われた30年で国力は落ちたが、それでも主要7カ国(G7)の一角を占め、安全な国。中国は、不動産バブルがはじけ、各種リスクを考慮するとバックアップとして日本に不動産を所有しておくメリットはあり、資産の逃避もできる。中国人による日本の不動産購入は止まりそうにない。
実際、円安やファンダメンダルズの低下で「安い、ニッポン」になっている。仮にとある日本の住宅価格が1億円だったとする。11年10月31日に1米ドル75円を付けていたころは、132万8000ドルになる。一方、25年11月21日は1米ドル157円なので、1億円は63万5000ドルとほぼ半値になる。高市政権の経済政策は財政出動が多く、円安を引き起こしやすいことから、さらに下がる可能性は否定できない。
