2026年1月2日(金)

トランプ2.0

2026年1月2日

 従って、新年に向けてのトランプ政権の最大課題は、一般庶民にとって切迫した関心事である住宅関連費、食料品、電気代、医療費などの高騰傾向にいかにブレーキをかけられるかにあることはまちがいない。

 この点に関し、ホワイトハウスはすでに、諸外国に対する高関税措置のあおりをもろに受け苦しい営業を強いられている農家向けに120億ドルの特別支援措置を打ち出したが、農家以外の一般家庭は何ら恩恵を受けておらず、いぜん不満はくすぶっている。

 さらに、大統領は、高関税政策に対する批判をかわすため、できるだけ早い時期に低所得者層、中産階級を対象として一世帯当たり「2000ドル」もの“関税配当金(tariff dividend)”支給構想を打ち上げているが、財政問題の専門家たちはその実現可能性に疑問を呈しているほか、米議会で承認を得られるかどうかについても、見通しは立っていない。

外交における〝成果〟

 外交に目を転じると、25年を総括した最大のハイライトは、諸外国間の紛争処理へのトランプ氏の積極関与と、去る12月初め公表された基本指針「国家安全保障戦略」の二つだった。

 このうち前者について、トランプ氏は「私は就任以来、すでに8つの戦争を解決に導いた」と繰り返し公言し、自らがノーベル平和賞受賞にふさわしいことを内外に訴えた。

 米国務省の説明によると、大統領が「終結させた」とする「8つの戦争」とは、アルメニア対アゼルバイジャン、カンボジア対タイ、ガザ地区をめぐるイスラエル対過激組織「ハマス」、ルワンダ対コンゴ、インド対パキスタン、エジプト対エチオピア、セルビア対コソボを指している。

 しかし、カンボジア対タイの紛争では、いったんは停戦合意したものの、最近になって、再び銃撃戦が始まっており、インド・パキスタン間の停戦合意については、トランプ氏の介在以前に両当事国間で一時的和解にこぎつけていたほか、両国間の永年にわたる対立の根本要因は除去されておらず、ガザ紛争では、「ハマス」の武装解除、ガザ地区内に駐屯予定の「国際治安部隊」などの重要懸案が未解決のままになっており、多くの専門家の間でも、「どの紛争も『終結』とは言い難い状態」との冷ややかな見方が出ている。

 大統領が解決に向け最も神経をとがらせるウクライナ戦争も、側近のウィトコフ中東担当特使によるウクライナ、ロシア双方間の度重なる調停工作にもかかわらず、年内決着とはならず、新年持越しとなった。

 双方和平に向けて最後のハードルとして立ちはだかっているのは①停戦ラインの画定②停戦ライン遵守の保証の2点とみられているが、ロシアが強硬に主張する東・南部4州の割譲に関し、ウクライナにとって憲法違反になりうる「領土放棄」は譲歩しがたく、停戦ラインを引いたとしてもロシア側の違反を回避するための国際治安部隊の規模、態様に関する双方間の溝は深まったままだ。

考え方を根本的に逸脱した「国家安全保障戦略」

 中長期的な意味合いを持つ「トランプ2.0」の「国家安全保障戦略」に関しても、今後の展望は決して楽観を許さない。同戦略で何よりも驚かされるのは、第一次トランプ政権下で打ち出された17年度版からの根本的逸脱だ。

 8年前の文書では、北大西洋条約機構(NATO)の「永年にわたる役割」について「競争相手国に対する絶対的優位性確保に不可欠な存在」として持ち上げ、日本など同盟諸国との関係についても「今日の脅威に対処する最善の防衛戦略」と高く評価する一方、中国とロシアについては「米国にとって長期的かつ重大な脅威」と警鐘を鳴らした。


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