疲弊するベネズエラ経済
英国政府のベネズエラ旅行時の注意事項には、犯罪に関し次が記載されている。「ベネズエラは世界でも有数の殺人率の国だ。強盗、カージャック、侵入犯は非常に多い。公共交通機関を避けること。カラカスの地下鉄では銃を突きつけた強盗事件が複数発生している」。
世界銀行、米国中央情報局(CIA)ワールドファクトブック、国連難民高等弁務官事務所の情報をまとめると、現状は次だ。
国内人口は、3125万人(24年推定)。治安の悪化、食料、医薬品など必需品の不足により、300万人が避難しているコロンビアを含め650万人以上がラテンアメリカとカリブ海諸国に滞在。合計約800万人が国外に流出している。
24年の経済成長率は5.3%だが、14年のマイナス3.9%から20年のマイナス30%まで7年連続でマイナス成長になっており(図-2)、国内総生産(GDP-15年価格)は13年の546億ドルから24年の167億ドルまで3分の1以下に減少した。1人当たりGDPは推定4900ドル。ネパール、カメルーンと同レベルの世界175位だ。
マドゥロ大統領のばらまき政策が引き起こしたインフレは依然続いている。21年の消費者物価上昇率は推定1588%、22年の推定は201%だ。
この経済情勢の背景にあるのは、チャベス時代から低迷を始めた原油生産だ。石油の収入に大きく依存していた経済は、石油政策が引き起こした生産の低迷により行き詰ってしまった。
増え続ける世界の石油消費
今から約50年前の1972年、世界の知識人の集まりとされたローマクラブが「成長の限界」を発表した。地球の資源は有限であり、増え続ける廃棄物を受け入れる容量にも限りがあることから、やがて成長は行き詰まるとの主張だった。
石油をはじめとする資源は数十年で尽きるとされ、当時の主要国はエネルギーの供給の大半を石油に依存していたため大きな話題になった。日本もエネルギーの4分の3以上を石油に依存していた。
出版から50年以上経つのに、石油は依然としてまだ数十年利用できる埋蔵量がある。どうしてだろうか。出版の翌年73年に起きた第一次オイルショックのためだ。
世界の主要国は、エネルギー安全保障を意識し脱石油、エネルギー源の多様化に踏み出した。石油価格の上昇も多様化に拍車をかけた。
世界の石油の消費量は、オイルショックまで毎年7、8%ずつ増えていたが、価格の上昇もあり増加率が頭打ちになった。その一方、価格上昇により石油の可採埋蔵量は増えた。可採埋蔵量の定義は、技術的、経済的に採掘可能な量だからだ。
石油の国別埋蔵量は図-3の通りだ。石油の消費量はオイルショック前との比較では伸び率が緩やかになったが、途上国の経済発展もあり、毎年少しずつ増えている(図-4)。
コロナ禍による消費の落ち込みがあったものの、いま一日当たり約1億バレルの石油が消費されている。IEAは、現状の政策が継続するシナリオでは石油の消費量は50年には日量1億1300万バレルに増加すると予測している。



