新しい政策が導入される結果石油消費がピークアウトするシナリオもあるが、世界の石油への依存は続く。
石油への依存が当分続く中で、製油所に関する問題を抱えている米国は解決策を求めていた。その答えがベネズエラの原油だ。
米国の石油供給の悩み
2000年代後半のシェール革命により、米国はシェール層からの天然ガス、石油の商業生産に成功し、原油生産は2.5倍になった(図-5)。天然ガス、石油共に自給率が100%を超えた。しかし、米国は依然原油の輸入を続けている。
理由は、米国の製油所にある。シェール革命前に米国で採掘されていた原油の多くは粘度が高い重質油だった。米国の石油消費が増え原油が輸入される時も多くの重質油が輸入された。
原油をガソリンなどに精製する米国の製油所の多くは重質油の利用を前提に設計されている。全米では、7割の製油所が重質油でより効率的に稼働する。軽質油を利用するとコスト増になりガソリン価格などが上昇する。
生産が増えているシェールオイルは軽質油なので、米国の製油所が必要とする重質油を供給したのが、サウジアラビア、カナダ、ロシア、ベネズエラなどだ。ベネズエラへの制裁により19年後半から原油の輸入が禁止された際に落ち込みを埋めたのはロシア産原油だった。
22年のロシアへの制裁によりロシア産原油が禁輸になった際には、ベネズエラで生産していたシェブロンに許可を出しベネズエラ産原油の輸入を再開することで穴埋めした。図-6がこの状況を物語っている。
多くの米国の製油所は、ルイジアナ州からテキサス州のメキシコ湾岸に位置している。輸入原油の受け入れに便利なためだ。
海上輸送距離が短いベネズエラ産原油は、着ベースではもっとも競争力がある。その上、米国産シェールオイルを完全に補完することができる。
ベネズエラ産原油を米国がコントロールし増産できれば、実質100%の石油の自給率が達成でき、他国からの輸入に依存する必要がなくなる。
米国はベネズエラ産原油を品質面、コスト面から必要としたのだ。これが、トランプが石油生産復活にこだわる大きな理由だろう。大きな投資に見合うだけの価値が米国にはあるが、その代償は大きくはないのだろうか。


