ガザ市民を”ヒーロー化”する言説
さらに、「殉教」や「犠牲」を美化するだけでなく、抵抗の名の下、闘いを諦めない存在としてガザ市民をいわば「神聖化」「ヒーロー化」する言説も文書から浮かび上がる。
「パレスチナ人民は、その忍耐力、抵抗力、土地への執着によって世界を驚かせた。敵は、いかなる瞬間においても、パレスチナ人から弱さや敗北の表情を引き出すことができなかった。どれほどの苦痛と傷を負おうとも、ガザでは白旗は一度も掲げられなかった。ガザは信仰、忍耐、堅忍を示す世界的な学校となり、犠牲と英雄性の比類なき模範となり、尊厳と信念の意味を世界に示した」
どれほどの苦痛を背負おうとも「犠牲と英雄性の比類なき模範」を示したとして、ガザ市民の「不屈の精神」を最上級の言葉で称え、「世界はパレスチナ人民が土地に固執し、追放を拒否する決意に驚かされた」と結ぶ。
もちろん、問題の根源はイスラエルの占領にあることは言うまでも無く、長年解決に及ばなかった占領に対して攻撃の理由を帰するハマスのロジックがそこにはある。国際法に違反する占領に抵抗する権利は、決して否定されてはならない。だが同時に、こうしてガザ市民を不死鳥かのように描く言説は、多くのガザ市民自身に支持されていないことにも目を向けなくてはならない。
ガザ南部ラファ出身の男性はこう嘆く。
「私たちは不死身のヒーローなどではありません。ガザの人々が抵抗のスローガンのもといつまでも闘い続けるかのように美化されることに、私たちは疲れ切っています。ガザから離れた場所で優雅な生活を送りながら“不屈の忍耐”などと叫び続けるハマス指導者には本当に分かってもらいたい。私たちが求めているのは『殉教』などではない、平穏な暮らしです」
