トランプマシンは他にもある。トランプ氏に批判的な米ABCニュースなどのオールドメディアやレガシーメディアに対抗して、トランプ氏を擁護するニュースマックスやリアル・アメリカズ・ボイスといった新興の極右メディアおよび極右団体プラウド・ボーイズなどの白人至上主義の団体などだ。
トランプマシンは、米国の方向性に強い影響を及ぼしている。ミラー氏やホーマン氏は、文化的多様性を強みとする社会や国家を否定し、トランプ氏の意思を反映し、かつ自分たちの信条を実現するために、多文化共生を受容しない社会へ米国を向かわせている。
トランプマシンの一人で、MAGAのスーパースターとされたテーラー・グリーン下院議員(南部ジョージア州選出)が、1月5日付で議員辞職した。きっかけとなったのが、グリーン氏が、未成年の少女に対する性犯罪で起訴されたエプスタイン元被告(19年拘留中に死去)に関する文書の全面公開を求め、トランプ氏と対立したことであった。
エプスタイン文書に加え、グリーン氏は、トランプ氏の命令によるベネズエラ沖での麻薬密輸船とみられる船舶への攻撃は「アメリカファーストではない」と断じた。彼女は、現在の米国はトランプ氏が公約した方向へ進んでいないと言いたかったのだ。
11月3日の中間選挙までエプスタイン問題が尾を引いた場合、トランプ氏はエプスタイン文書と物価高から国民の目を逸らすために、新たな外交問題を作り上げ、軍事行動に踏み切ることが予想されていたが、早くも地上作戦を実施し、ベネズエラのマドゥロ大統領を拘束した。トランプ氏は「アメリカファースト」の看板を下ろしたことになり、グリーン氏の言葉の正当性が示された。
トランプの
「強者」と「弱者」
読者の皆さんは、「強きをくじき、弱きを助ける」のが正義の味方であり、ヒーロー像であると教えられなかっただろうか。筆者にはトランプ氏の言動は真逆に見えてならない。
例えば、昨年11月下旬、トランプ氏は「降伏文書」ともいえる28項目の和平案を作成し、期限を設定してウクライナ側に呑ませようとした。
また、日中関係においてもトランプ氏の強者と弱者の思考様式は顕著に現れている。ウォール・ストリート・ジャーナルは、中国軍が台湾周辺で戦艦を使って武力行使に出れば、「存立危機事態」になり得るという高市氏の発言に対して、トランプ氏が、日中関係をエスカレートさせないように助言したと報じた。トランプ氏は、(強権的な)習近平国家主席に配慮し、同盟国日本の首相である高市氏に釘を刺して自制を求めたことになる。
その背景には、11月の中間選挙がある。中西部の農業従事者はトランプ氏の支持基盤であり、中国は米国産大豆の大量輸入を約束している。連邦下院で多数派を民主党に奪われれば、トランプ氏は第1次政権に続いて第2次政権でも弾劾されるだろう。しかも、トランプ氏は、昨年の米中関税交渉で、レアアース(希土類)の採掘・精錬・供給を独占する中国にレアアースのカードを切られた。このゲームでは習氏は強者であり、トランプ氏こそ弱者なのだ。そこで、自分よりも弱い高市氏を説得しようとしたのは納得がいく。
