2026年1月30日(金)

韓国軍機関紙『国防日報』で追う

2026年1月30日

 ただし懸念もある。非常戒厳で軍は大統領の命令に従ったにすぎないが、その後の政治的混乱の中で多くの指揮官が更迭され、責任を負わされた。

 文民統制のもとで命令に従うことが罪に問われるなら、今後の軍は政治的判断を迫られるたびに萎縮しかねない。安長官が唱える「国民の信頼回復」は、軍を守るべき政治の側にこそ問われている課題ではないのか。

 意外に少ない大統領記者会見で語ったこと

 李在明大統領は1月21日、大統領官邸である青瓦台で新年記者会見を開き、北朝鮮との「9・19軍事合意」を回復する方針を明らかにした。韓国では大統領の記者会見自体が珍しく、朴槿恵政権では5年間でわずか5回、文在寅政権でも8回程度にとどまった。李大統領は就任30日目という異例の早さで初の記者会見を開くなど「意思疎通」を重視しており、今回が3回目となる。

 9・19軍事合意とは、18年9月に平壌で開かれた南北首脳会談で締結された軍事分野の合意書のこと。38度線一帯での敵対行為の中止、非武装地帯の平和地帯化、黄海の北方限界線(NLL)周辺での偶発的衝突防止などを定めた。

 しかし北朝鮮が23年に偵察衛星を打ち上げ、これに対抗して韓国の尹錫悦政権が合意の効力停止を宣言。その後、北朝鮮も合意の完全破棄を通告し、南北関係は急速に冷え込んだ。

 李大統領は会見で「南北間の偶発的衝突を防ぎ、政治・軍事的信頼を築くため合意を復元する」と述べた。米朝対話の早期実現に向けて「ペースメーカー」の役割を果たすとも表明し、堅固な韓米同盟と自主国防を土台に「核のない朝鮮半島」を目指す姿勢を示した。一方で「鋭い冷ややかさが一度に溶けることはない」とも認め、段階的なアプローチで北側の呼応を引き出す考えを強調した。

 ただ、北朝鮮は24年に韓国を「敵対国」と規定し、統一を放棄する憲法改正まで行った。合意回復の呼びかけに応じる兆しは今のところ見えない。理想と現実の溝をどう埋めるか、李政権の外交手腕が問われる。

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