2026年2月16日(月)

Wedge OPINION

2026年2月16日

 そこに来て、25年1月に発足した第2次トランプ政権が、突如として「トランプ関税」をインドに対しても課すことを発表し、8月下旬には事実上合計50%関税となった。

 5月に発生した印パ衝突では、モディ首相が「テロとの戦いを制して解決に導いた強気指導者モディ」というナラティブを国内に向けて発信していたにもかかわらず、トランプ大統領が「印パの仲介をした」とSNS上で勝手に公表する(事実関係も不明)などを繰り返し、モディ首相はトランプ大統領と距離を置くようになる。制度的および国家リーダー間の個人的な隙間風が米印関係に斥力をもたらした。

 相対的に印中関係の引力が働き、ついに、25年8月31日から9月1日の上海協力機構(SCO)天津サミットのタイミングで、モディ首相が約7年ぶりに訪中、印中首脳会談が実現した。カザンそして天津での首脳会談を経て、印中関係は急速に雪解けに向かった。春ではないが確実な雪解けだろう。

停滞する中国、伸びるインド
米中印がそれ以外を突き放す

 「米中覇権対立」という文脈において、中国はレアアース輸出規制を戦略的な外交カードに仕立て上げ、対米交渉を堅調に推移させているが、足元の国内経済は絶不調である。21年不動産総融資量規制からのバブル崩壊によってデフレが長引いている。25年12月10日、11日に開催された経済政策方針を打ち出す中央経済工作会議でも、より一層の内需拡大が強調された。

 また、中国共産党機関誌であり、北京中央の理論構築と党最高権威による公式イデオロギー確定装置である『求是』(25年12月16日)には、内需拡大を主眼とした経済政策に関する習近平論文が掲載された。

 発出内容で注目を集めた共通キーワードが「投資于人(人への投資)」だった。「投資于物(物への投資)」との併記だが、これまでインフラ投資補助金・投資促進偏重スタンスであった習近平思想の路線転向とも読み取れる。育児、教育、再就職、医療、社会保障といった人民個人への支援策の重視につながるものだ。中国デフレの厳しさが滲み、珍しく習指導部がプチ白旗をあげている様子も窺える。

 一方、インドの経済成長は堅調だ。国際通貨基金(IMF)によれば名目国内総生産(GDP)規模はこの10年余りでおおむね2倍に拡大。00年代半ばでは世界トップ10圏外に位置していたインド経済は、日本を射程に入れる規模にまで成長した。

 コロナ禍以降の時間軸では、停滞する中国経済と上り調子のインドというコントラストが際立つ。とはいえ長期的に重要な点は、総合的技術力や資本ストックとして中国経済はそれなりに堅牢なことだ。

 これらの傾向と産業経済の基礎体力、人口規模を踏まえれば、今後数年間でインドがGDP世界第3位に達した後は、米中印の3カ国が順不同な突出した上位陣を形成し、第4位以下の国々との差は一段と拡大していく公算が大きい。言うまでもなくこれは国民の自由度や一人あたりの豊かさを示すものではない。

 米ソ冷戦から米中覇権対立という外交環境で生きてきたほとんどの現代日本人の感覚として、敵陣営か味方陣営かという二元論的思考になりがちだ。その延長線上でインドについて「敵の敵として、味方に引き寄せるべき」といった概念のもとでQuad(日米豪印戦略対話)やFOIP(自由で開かれたインド太平洋戦略)が日本主導で提唱されてきた経緯もある。


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