2026年2月16日(月)

Wedge OPINION

2026年2月16日

 インドは急速な経済成長とともに電力供給不足に陥っており、常に発電燃料資源の入手が課題だ。トリウムについてインドは天然埋蔵量が世界一であることが知られている。原発トリウムサイクルへの移行は印中ともにロシアや中東への天然資源依存を低減させる。仮に、複雑な計算の結果、インドが原発推進とともにトリウムサイクルを重視し始めた時、既存の外交協力関係や他の外交フレームを棚上げしてしまうほどの「印中合作」の強い引力が生まれるだろう。日本はこうした不都合なシナリオをも想定して対応策を考慮しておくことは悪手ではない。

「米中対立」時代の日本外交は
G3世界ではもう通用しない?

 将来の米中印G3時代では、G3のそれぞれが引力と斥力を有し、接近することもあろうし、対立し離れていくこともある。そうした3極が太陽(天体)のように回る環境下で、日本も含めたその他の国々はどのように3極とうまく渡り合っていくべきなのか。世界がG2からG3に移り、さらに物資からマネーまで国際的なフローのレイヤーが物理的な領域だけでなくサイバーやAI技術などのように重層化し、複雑に絡み合うことによって、米ソ冷戦時のような「面」ではなく、「三次元立体構造」になる。現在の二極的・二次元平面的な「米中競争対立フレーム」に最適化された日本外交の論理が通用するとは限らない。現在とは比べものにならないほど高度な戦略的外交が必要になるだろう。

 日本が非G3諸国におけるイニシアチブを確立する戦略シナリオを保有しておきたい。日本のパフォーマンス最適化のために、欧州先進国やブラジル、インドネシアといった大国との関係で日本が統率力を発揮する「非G3イニシアチブ」という想定は、今世紀半ばの国際環境に備えた外交指針として十分に納得感のある戦略なのではないか。

 筆者は日印関係の深化を主張しているが、それは現在の米中競争対立フレームでの最適化行動という理由よりも、数十年先の米中印G3構造を見据えた米中印それぞれとのバランスの良い関係性構築というリスク分散のためだ。日本は、米中との関係に比べて圧倒的に定義が脆弱で関係性が希薄な対印関係の深化に向け、これまで以上に動くべきだ。

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Wedge 2026年2月号より
世界を揺さぶるトランプ・パワー
世界を揺さぶるトランプ・パワー

1月3日、トランプ大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、ベネズエラに対する攻撃を成功させ、マドゥロ大統領を拘束したと発信し、世界に衝撃を与えた。自らを「平和の使者」と称していたトランプ氏だが、戦火の口火を切った格好だ。トランプ氏にとっては、犯罪者を拘束するための法執行をしたにすぎないという認識なのだろうが、議会の承認を得ていないほか、国際法に違反しているという指摘もある。 独裁者を追放するという帰結と、そのプロセスは別に考えなければならない。そうでなければ、「力による現状変更を容認しない」という、戦後80年かけて世界が営々と築き上げてきた共通認識を崩したロシアを誰も批判できなくなる。 そもそも、トランプ氏は積み上げられてきた「ポリティカル・コレクトネス」を否定し、ルールを決めるのは自分だと言わんばかりの行動をとってきた。まさに「トランプ・パワー」である。 そんなトランプ氏を大統領に再度選んだ、現在の米国の政治経済、外交、そして思想などをつぶさに見ていくと、我々が知っているかつての米国から大きく変貌していることが分かる。 それでも米国が日本にとって重要な同盟国にあることに変わりはない。米国とどう向き合っていくのか。世界だけではなく、日本こそ問われている。


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