2026年2月12日(木)

日本人なら知っておきたい近現代史の焦点

2026年2月12日

深まる米国社会の分断

 さて、グラミー賞がどうしてこのような対立を招くことになったのだろうか。一つには、音楽の消費の仕方の変化があるだろう。過去において、音楽や映像は、一つの場所に集まって皆で楽しむものだった。それがストリーミング中心の現在、音楽はパーソナルなものになっている。そうなればなるほど、今年の曲はこれと皆が納得できる選択はできにくくなるのは仕方ないだろう。

 例えば、1984年にはマイケル・ジャクソンの「スリラー」が最多8部門でグラミー賞を受賞したが、そのときは、圧倒的人気とその音楽性に、マイケル・ジャクソンが黒人だから下駄をはかせてもらって受賞したとか揶揄するものはいなかった。そのような全米が納得するようなヒット曲は生まれにくくなっている。

 そしてなにより、今は国が分断しているというのがある。トランプと反トランプの分断が先鋭化している今、何をやるにしても政治的スタンスを明らかにしつつ皆を納得させるのは難しい。

 今回のグラミー賞授賞式を見て、そのICE批判に違和感を持った人もいたかもしれない。一番売れたアルバム、一番期待できる新人といったような音楽にのみ基づいた選出ではなく、選出に政治的なメッセージ性をもたせようとすると、分断の場に音楽を持ち込んで、音楽を冒涜していると考える人や、純粋に音楽を評価していないとして面白くないと考える人も出てこよう。

 また、高級住宅地の高い塀に囲まれた豪邸に住んでいる大金持ちのセレブが、きれいな衣装を身にまとって、ハリウッドから移民を守れと叫ぶ姿を、実際に移民の流入の影響を肌で感じつつ、同じアパートに住んだり、軒を並べて暮らしたりしている低所得者の白人の中には複雑な思いで見ていた者もいただろう。

 トランプ二期目はまだ一年と少しが終わったばかりである。分断をさらに深めていくであろう米国は果たしてどこまでいくのだろうか。

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