しかしながら、キューバに対して圧力をかけ続けるという方針は明確である。メキシコがベネズエラに替わってキューバへの最大の石油供給国となっているという事実はトランプ政権にとって面白くなく、キューバ系米国人への配慮もあり、メキシコに対しキューバへの石油供給を制限するよう要求する可能性は十分ある。
柔軟性を発揮するメキシコ
シェインバウムも、対キューバ配慮の建前を完全に反故にはしない範囲で、供給量の減少、人道的目的への使途の限定、技術的理由による供給制限といった形で象徴的に対応する余地はあるのではないかと思われる。それで収まるか否かはトランプ政権の対キューバ政策の切迫度次第ということであろう。
USMCA見直しの交渉との関係では、対キューバ石油輸出が協定の交渉対象となるわけではなく、米国産業界は協定の継続を望んでおり他の争点も多いことから、米側が対キューバ石油の自粛を当初から交渉材料として持ち出すことはないであろう。もっとも、既に問題となっているエネルギー政策との関連がないわけではなく、米側から交渉妥結の条件として持ち出したり、交渉が行き詰まる際に決裂回避のパッケージに対キューバ石油輸出制限が加えられたりといった可能性はあり得るかもしれない。
いずれにせよ、米国・メキシコ間経済関係を破壊してでもトランプが何か行動をとるところまで、キューバ問題はまだ切迫しておらず、当面米国にとりキューバを封じ込め、何もできない状態にしておくだけでも十分ではないかとも思われる。また、キューバは国内石油需要の4割は自給でき、他にロシアやアルジェリアからの輸入の可能性もあることから、メキシコが多少石油供給を減らせばキューバ国民にさらなる耐乏生活を強いることにはなるが、キューバを見捨てたことにはならないであろう。
シェインバウムは、これまでトランプとは正面から対立せずに、ある程度要求には対応することで理解を得るという対応が成功してきたと評価されている。キューバ問題についてもイデオロギーを超えた柔軟性を発揮することが期待される。

