伐採や輸送、さらに高温乾燥の過程でも少なからぬCO2を排出している。だからRC造と差がないというLCA(ライフサイクル評価)の結果も出ている。
しかも伐採跡地に再造林を行い、苗が使われた木材と同じ量(太さ・長さ)の樹木に数十年かけて成長して初めて炭素固定、CO2の削減に結びつく。ところが日本の再造林率は3~4割に過ぎない。跡地を放置するのなら、むしろCO2の排出を増やすだろう。
さらに高層木造ビルの多くは、木造ハイブリッド構造だ。つまりRC造や鉄骨も使われ、また耐火被覆などに大量の非木質建材が使われる。たとえば先に紹介した「アトラシアン・セントラル」ビルも、地下2階から7階まではRC造。7階以上も鉄骨とのハイブリッドだから、木造部分は意外と少ない。つまり「見た目ほど木じゃない」のだ。
木材はリサイクルできるという声もあるが、接着剤で固められた集成材を別用途にリサイクルするのは至難の業だ。たとえば昨年の大阪・関西万博の大屋根リングも、使用された木材の再利用は1割以下に留まっているのである。
林業振興にもなりにくい
木造の室内の快適さを売り物にするのも、違和感がある。なぜならCLTなど構造材は、通常表に現われず、内装の下に隠されるものだからだ。つまり「木がいっぱい」と感じるとしたら、構造材の上に改めて木の内装材を張っているからだ。外壁も木質の外構材を張らなければ、木造ビルであることさえわからない外見だろう。
逆に言えば、構造材がRC造や鉄骨でも、表面に木を張れば同じなのだ。天井、床、壁などの内装や外壁に木材(および木材ぽく見える建材)を使うことで、見た目は「木がいっぱい」になり、リラックス効果やストレス軽減効果があるのではないか。ただ、これは木造化ではない。せいぜい部分的な木質化である。
国産木材を使えば林業の活性化に役立つとする意見にも「不都合な真実」がある。
先に触れた再造林率の低さを考えれば、伐採が進めば進むほど、むしろ森林破壊が進むことを意味する。また盗伐など違法伐採が、日本も含めて世界中で増えている実情からも、木材需要が高まれば、森林は劣化しかねないのである。
加えて現在の林業界の悩みは、「木材需要が少ない」ことではない。バイオマス燃料が激増して需要は右肩上がりだ。しかし木材価格が下がって、長年育てた木を出荷しても林業家の手元に利益が還元されない。だから再造林も進まないのだ。
