2026年2月26日(木)

Wedge REPORT

2026年2月26日

 また、不動産協会は、国交省の調査公表を受けて同日、「分譲マンションの投機的短期転売問題にかかる取組みについて」を発表した。投機目的の購入・短期転売は好ましくないとして、具体的には、①登録・購入戸数を1物件当たり制限、②契約・登記等名義の厳格化、③売買契約締結から引き渡しまでの期間の売却活動の禁止を基軸にして今後、各社ごとに対策をとる。これを受けて、住友不動産、三井不動産など同協会正副理事長会社8社は、この対策の導入を決めたとしている。

 その一方で、「憲法に『財産権の保障』が定められており、そもそも自由経済において、私的財産の処分に関する権利に制限をかけるのは、慎重に考えなくてはならない」とも指摘し、これ以上、マンション取引に関して制限を加えることには消極的な姿勢だ。

供給不足の解消を
将来を見据えた対策

 建設省(現・国交省)出身で日本大学経済学部の中川雅之教授は「投機的取引か、まともな投資行為かどうかを区別するのは難しい。それよりも、空き家になっているかどうかを目印に取り締まりをした方が良いのではないか。国交省の住宅局は、遊休不動産はこれまでは地方の問題とみていたが、供給面の対策として、空き家対策も含めて東京の遊休不動産の活用をすることを考えているのではないか。

 もう一つの対策として、需要側に対して何らかのサポートをする必要がある。東京都は26年度より、子育て世帯やひとり親世帯を対象に、手頃な価格で設備の整った『アフォーダブル住宅』を供給する事業を打ち出したが(わずか200戸では)当選した人と外れた人との間で不公平感が出る。

 東京がこれからもグローバルな都市として機能し続け、国際競争力を維持していくためには、高スキル人材に加えて、公共サービスを提供する人や医療・福祉などの『エッセンシャルワーカー』が都心近くに住めるよう手厚い対策を取る必要があるのではないか。また、中高年齢者が保有している金融資産が生かされていないので、この資産をうまく活用して高齢者と他の世代が一緒に住めるような住宅(シェアハウス)を作るのも、供給不足解消につながるのではないか」といくつかのアイデアを提案する。

 専門家の一人は「日経平均が上昇している間は、富裕層の資金力が増えるためマンション価格は値崩れしない」と説明する。だが、それが当てはまるのはマンションを購入するのに銀行ローンを組む必要のない、株価の値上がりで潤っているキャッシュリッチな富裕層たちだけだ。

 マンション購入希望の中間所得層は、変動金利の住宅ローンを組む人が多かったが、金利上昇を見越して、変動から固定金利に変えようとする動きもあるという。しかし、10年固定の最優遇金利でも大手銀行の平均で3%近い水準まで上昇している。

 衣食住は人間の基本的な生活基盤であり、「住まい」の安定は暮らしの安心にもつながる。所得格差が広がる中で、有効な対策が打ち出されなければ、中間所得層のマンション購入の夢は、ますます遠のくばかりだ。

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Wedge 2026年3月号より
酷似する「戦間期」と現代 第三次世界大戦を防げ
酷似する「戦間期」と現代 第三次世界大戦を防げ

「新しい戦前になるんじゃないですかね」─。今から4年前、テレビ朝日の『徹子の部屋』でタモリさんが口にした言葉だ。 どのような意図で発言したのかはわからない。ただ、コロナ禍だった当時、全体主義体制を称揚するような空気が漂い、議会制民主主義の危機も顕在化し、「1930年代」に時代が近づきつつあると感じていた私は、その言葉に妙な〝重み〟を覚えずにはいられなかった。 昨今の様々な出来事を見るにつけ、その感覚は確信へと変わった。時代は、当時の「戦間期」を思わせる局面に入り、大国指導者が世界の行方、人類の運命を左右する時代になったのである。このままでは、最悪の場合、第三次世界大戦が起こる可能性も否定できない。 ただ、もし戦争になったとしても、大国指導者たちが戦場に行くことはない。いつも犠牲になるのは、市井の人々である。 英国を代表する歴史家、A・J・Pテイラーは、『ウォー・ロード 戦争の指導者たち』(新評論)最終章で日本のことを取り上げ、こう指摘している。「日本は戦争の指導者はただの一人もいなかった」 つまり、指導者不在のまま、日中戦争、太平洋戦争へと突き進み、日本は破滅したのである。当時、大衆も熱狂し、政治はそれに流された面もある。 一度始まった戦争を終わらせることは容易ではない。それは4年が経過したロシア・ウクライナ戦争を見れば明らかである。動乱の時代、今こそ歴史に学び、教訓、希望を見出し、この危機から「脱出」する必要がある。


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